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□He is my age 知らなかったこと
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 深夜の資料室には、昨日配属されたばかりの新人分析官と、四天王の悪タイプ使いが未だに残っていた。
 カゲツが容器や包みのゴミをレジ袋に纏める後ろで、セナはタブレットの検索結果を眺める。
 検索ワードは『オーベム 事件』で、つい先ほど、先頭のサイトを読み終えたばかりだった。
 二番めのサイトの見出しに興味を引かれ、タップする。もう片付けも終えたので、ゆっくり読み耽っても問題はない。
 セナ自身、オーベムに遭遇したことがなかった。エスパー単体だっけ、複合?と記憶も定かでなかった。
 それでも、敵がオーベムを所持しているかもしれないから、なるべく情報を仕入れたい。
「オーベムってすごいポケモンなんですねー」
 それが、
事件・事故の救世主となるか? オーベムの魅力とは?
 イッシュ地方などで… …そんなオーベムと意思疎通を計れないかとの新しい試…

 という見出しだとしても。
「休めよ」
 レジ袋の口をぎゅっと縛りながら、カゲツが小言を洩らす。
「さっきの続きですよ。敵のことはよーく知っておかなくちゃなりません」
「はいはい。で、今度はなんて出たんだ」
「えーっと、『オーベムはエスパータイプなので頭がよく、三色の指でモールス信号を送れるよう、訓練することでさらなる利用の幅を広げる試みもある』」
「訓練してどうすんだよ」
「さぁ。遭難者の救助とかどうです? サイコパワーで見つけ出して、ココダヨー、何人ダヨーって救助隊に知らせるとか」
「そんなんいいから対処法とか倒し方でも調べろよ。いや、その前に休め」
「あー、いるみたいですよ、調べてる人」
 検索結果まで戻り、下までたぐれば検索候補がずらりと並んでいる。
『オーベム 危険』
『オーベム 進化』
『オーベム 記憶操作』
『オーベム 倒し方』
『オーベム イッシュ地方』
『オーベム 棲息地』
『オーベム 宇宙』
『オーベム 捕まえる方法 安全』
 見ていると、オーベムの文字がゲシュタルト崩壊しそうだ。セナはブラウザを閉じて、眼頭を押さえた。
「明日・・・・・・今日の昼休みにでもします」
 ポケモンに関して調べる者は多いが、オーベムの場合は検索ワードに偏りがある気がする。世間からすると、危険なポケモンと認識されているのだろう。
「お前今日初日だよな!?」
「え?」
「勤務初日だよな!」
「あ、はい」
 正確にいえば、十二時を回っていたので今は二日めだが。
 カゲツが哀れむように顔をしかめた。
「勤務初日のド新人に徹夜で仕事させたなんてこと、今までねぇぞ」
 しかし口調は呆然そのものだ。
「・・・・・・? 調べることがあるんだったら、徹夜してでも追いますよ」
「あー、前職刑事だったな」
 カゲツは片手を後頭部にやった。子どもをなんと諭そうか悩んでいるみたいに、苦悶している。
「それやったら早死にするぞ」
「だとしてもカゲっさんよりは長生きできると思います」
「お前な・・・・・・とにかく、ウチはヒマワキ署みたくブラックじゃ──」
「ヒワマキです、ヒ・ワ・マ・キ」
「あ、悪い悪い」
 よくある間違いなので、セナは気にしないことにした。
「長生きしたかったら、今日はもう休め」
 セナが時計を仰ぐと、もうすぐ十二時半になる頃だった。
 帰れる!
 と、密かに眼を輝かせる。
 泊まりになる覚悟だったけど家に帰れる!
 ならば急いで帰らねば、と安堵が起こり、カゲツの言葉は半ばにしか聞いていない。
「初日から散々だってのは気の毒だがな」
 ほら忘れてるぞ、とカゲツは、共用端末の、カードリーダーに置きっぱなしだった、セナのトレーナーカードを渡す。
 その直前、カードをまじまじと見て。
 見るなと注意してもいいのだが、生年月日くらいは見られても構わないか。セナは素早く受け取った。
「え、お前タメなのか」
 カゲツが驚いたように訊ねる。
「え?」
 タメ?
 同い年・・・・・・誰と?
 あ、ダイゴくんか。
「ダイゴくんとは同級生ですが」
「違えよ、いや、ダイゴもそうだけど、俺とタメなんだな!」
 は、と疑問を呈したいのをすんでのところで堪え、ぎこちなく首を傾げるセナ。
 タメ。同い年。
 ダイゴとカゲツが。
 カゲツと自分が。
「・・・・・・」
 嘘でしょ、の言葉を飲み込んだ努力を認めてほしかった。
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