短編(立海)

□春色
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立海に入学して三度目の春がやってきた


だけど俺の頭の中は




我が立海テニス部の三連覇を果たすこと





このことで埋め尽くされていて

春らしい色なんて微塵もなかった


まぁ、今までテニス以外夢中になることなんて特別なかったからね


世間では春は出逢いの季節だとか言ってるけど、俺にとっては別段どうでもよかった


そりゃあ、素敵なことだとは思うよ

だけど今の俺にはそんなこと考えられないしね



テニス以外興味ないんだ


ホームルーム中そんなことを考えていたら

あっという間に時間は過ぎ、部活の時間がやってきた




俺は新学期一発目の部活へ行くために教室を出た



部活見学に来る人達もいるだろうから、気持ちを引き締めていかないとね





教室を出てすぐに弦一郎と柳生に会った






「やあ、弦一郎それに柳生」

「ああ、精市。お前も今終わったのか」

「どうやらいつもより気合いが入っているようですね、幸村君」

「ああ、新学期一発目だからね。」




そうだな そうですね





それぞれ気合いを入れ直して俺たちは三人で昇降口へと向かった


隣の席がどうとか、クラスの様子はどうとか

三人で他愛もない話をしながら廊下を歩いていた

職員室前を通りかかった時、職員室から一人の女子生徒が出てきた





ペコっと小さくお辞儀をして

「失礼しました」

と言った、日直だったのだろうか


いや、学校生活ではよくある光景なのだけど

なぜか俺は目が離せなかった

彼女は職員室のドアを閉めた後、こちらに向かって歩いてくる

だんだんと縮まる距離

目が離せない俺

どうしてだろう、何なんだこの感覚は


綺麗な黒くて長い髪の毛に

少し離れていても分かる美しい顔立ち

近づくにつれてよく分かる白くて綺麗な肌



ドキドキした


これって、見惚れている ということなのか


初めてのその感覚は、永遠に感じた


俺は「一目惚れ」というものをしたのか


自分のことなのに曖昧なんて、おかしいよね


でも初めてなんだこんな感覚

キュッと胸を締め付けられるような

だけどすごく心地よくて、自然と顔が緩む


そんなことを考えていたら俺は、

どういうことかその子の前に立ちふさがっていた


俺自身もびっくりしたが、

一番驚いているのは紛れもなく彼女だろう

いきなり知らない男子生徒に道を塞がれたんだからね

しかもこちらは三人横に広がって歩いていたもんだから




って・・・・・


え?なに?

弦一郎と柳生も俺と同じ感覚だったの?




誰一人縦に列を整えようとせず、

みんなその綺麗な彼女にくぎ付けになっていた





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