長編(立海)

□始まり
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「なまえちゃん!今日から2年生ね、

剣道もお勉強も頑張るのよ」





「うん、お母さんもお仕事頑張ってね。

気を付けていってらっしゃい」






「んも〜一緒にいる時間が少なくてごめんなさいね、

寂しい思いさせるわね・・

少しでも時間ができたら戻ってくるから・・

元気にしてるのよ、怪我や病気には

くれぐれも気を付けてね」








「大丈夫だよ、もう慣れたもの。

私だって少しは自立しないと、ね」







「うー・・・なまえちゃああああ〜ん!」



「うわあ!お、お母さん!」



「新学期から元気だなー、なまえ」



「お、お父さん!お父さんも気を付けていってらっしゃい!

お母さんのことよろしくね!」





「ははは、わかったよ」







新学期、早々





今ではすっかり慣れてしまったこの恒例行事



新しい季節を迎え私も中学2年生





海外で働く両親はこの間、

つかの間の休暇をもらって日本に帰ってきていたんだけど、

その休暇もあっという間に終わっちゃって

今日からまた海外に戻ってしまう







少し寂しいけど、そんなこと言ったら

お母さん心配してお仕事行かなくなっちゃうもんね。

それに少し私も自立すること覚えないと







去年まではお姉ちゃんもいたんだけど、

お姉ちゃんは大学進学するのと一緒に遠くで

一人暮らしを始めたから、

本当に私は今日から一人なんだ





でもへっちゃらだよ、離れてたって

私たちは家族だし!

近所には親友なまえちゃんもいるもん









「それじゃぁそろそろみんな、時間だな」






「うん、いってきます。

そしていってらっしゃい!お父さんお母さん」





「なまえぢゃ〜ん、

お母さんのこと忘れないでねえぇえ」






「大丈夫だよお母さん、

たまにメールしようね!

お手紙も電話も待ってるから」








ぐずるお母さんを見て微笑む父

なんだかどっちが子供なのかわからなくなって

私もおかしくなって笑ってしまう






ああ、幸せだなあ







お姉ちゃんもいたらもっと幸せだけどね




幸せな時間はすぐに過ぎてしまい、

制服姿の私と大きなスーツケースを

それぞれ持った両親は玄関のドアの前にいる




「それじゃあ、なまえ。いってくる、

何かあったらすぐに連絡するんだぞ。

お姉ちゃんにもたまには連絡してやるんだぞ

寂しいだろうからな」






「なまえちゃーん、いってきますね。

お母さんはお姉ちゃんもなまえちゃんも

大好きよ、愛してるからねぇええ」







「ふふふ、ありがとう。

あんまりお姉ちゃんにしつこく電話しちゃだめだよ?

お勉強忙しいんだからお姉ちゃんは」







相変わらず、ぐずるお母さんを

父は引きずるように連れ出し、

ついに行ってしまった両親








この家には私一人








シーンという音が聞こえてきそうなほど静かな空間





なんだか一人であることが実感できず





お姉ちゃーん





なんて言ってみるけど

返ってくるのは沈黙だけで



一人ってこういうことなんだ

ってなんだかじわじわと

寂しさが溢れてきた




涙が溢れそうになったけど

今日から新学期だし

泣いてなんかいられないよね!

よし、学校に行く準備しよう


今日は親友なまえちゃんと学校に行く

約束してるんだもん







楽しまなきゃね!





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