長編(立海)

□隠しておきたい
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新学期が始まって、運よく私は

なまえと同じクラスになれた



すんごく嬉しかった

だって私はなまえが大好きなんだもの




大好きだって言ってももちろん

可愛いから、だけじゃないわよ




私は一度、いや何度も・・かもしれないけど

なまえには助けられてきた
















少し前の話をすると・・・









これは小学生の時の話なんだけどね。















小学生の時強気な性格のせいで

いじめの標的になってしまった私を

なまえが助けてくれたの



あんなに大人しくて、か弱そうな子に

助けられるなんて思ってなかったわ







小学生っていうのは時に残酷で

自分が味わったことのない痛みを

平気で人には与えられるのよね






いくら気が強いって言ったって

小学生の女の子よ?

物理的衝撃は痛いもんは痛いわよ




石ころとか、木の棒をぶつけられて

だけど、泣くのなんて悔しくてかっこ悪いし

やり返すのはもっとかっこ悪いから

耐えて耐えて・・・




そしたら何、泣かないからって



面白がったのかしら










寒い冬の、ある日の放課後

帰ろうとした私をわざわざ待ち伏せしていた女子数名

こんな寒い日によくやるわね、ほんとうに


かかってきなさいよ、と言わんばかりに睨み付けてやったの


そしたらその子たち、

余裕ですよとも言いそうな顔で笑ってるのよね







その手には、バケツ・・・









一つではない、中には水かしら




今日はびしょ濡れで帰宅決定、ね





「あんた、いい加減泣いて謝ってみたらどうなの〜?

ごめんなさーいって泣いてみなさいよ」






この子たちは私の泣いた顔がみたくてやってるのかしら




それともただ気が強くて負けん気の強い私を

なんとしてでも負かして自慢したいのかしら







・・・きっと後者ね


私アンタ達に何か

迷惑でもかけたのかしらね



そんなこと言ったらきっと

"存在が迷惑"なんて

屁理屈が返ってくるんでしょうけど












「なんとか言いなさいよ!!!!」










そう怒鳴りつける声

私に向かって傾いてくるバケツを見て


私は次に来る衝撃、途轍もない冷感を覚悟して






目を瞑った

























・・・・あれ









冷たくない・・っていうかむしろ















・・・温かい・・・・・?











確かにバケツがひっくり返った音は聞こえた




そこまで考えて私は気づいた



誰かに抱きしめられている



そっと背中に手をまわしてみると













・・・冷たい










私は、そこでやっと目を開けた




だけど真っ暗だ


抱きしめられていて前が見えない


ただ、背中にまわした手に

濡れた髪の毛が絡まっているから

きっと女の子なんだ






そんなことを考えて、

だけど状況が読めずにボーっとしていたら





急に視界が明るくなった

目の前には私を抱きしめていた人物













天使か、妖精か











見たことがあるわけでもないのに

そんなことを思わせるくらい綺麗な顔








大丈夫?と聞いてくる声は

とても温かく、優しい色だった




開いたまま塞がらない口で何も言えずにしていると

その子はさっきまで私を囲んでいた子たちに向き合った






その子たちの顔と言ったら

笑っちゃうくらい青くて

水かけられた人より寒い顔してんのよ








「あ・・・・なまえ・・・ちゃん・・・」



「なまえちゃんだ・・・・・」



「わ、私たちったら・・・なんてこと・・」



口々に言う、「なまえちゃん」

この子はなまえちゃんっていうのね






それに、この子たちの焦りよう

なまえちゃんは相当すごい人なのかしら











「この子が、あなたたちに何か悪いことでもしたの?」











優しい声色ではあったが、

どこか怒りを含んでいるようにも聞こえた








「い、いや・・違うの・・・そ、それより

なまえちゃん・・ごめんなさい・・」







さっきまでの強気はどこいったのよ

本当にずるいわよね女の子って



「私じゃなくて、この子に謝ってよ。

私は水をかけられて怒ってるんじゃない。

寄ってたかってこの子をいじめてる、

卑怯なあなたたちが許せない」







温かな声色は一気に零下に達したかのような

冷たく、だけど凛とした声へと変わり

目の前の子たちに突き刺さった










「!!」






さすがに怖くなったのだろう、

その子たちの顔はもっと青くなって

泣きそうな顔で私に謝罪してきた







「その・・・親友みょうじさん・・

ごめんなさい・・・」




「ごめんなさい・・・親友みょうじさん・・

私たち・・その、目立ちたくて・・・つい」







口々に私に謝るその子たちは、

どうやら目立ちたいがために

私に嫌がらせを繰り返していたらしいのだ

クラスの中心と言ってもいいくらい

活発だった私がどうもこの子たちには

目障りだったらしい












もっと他にやり方があったろうに

いじめ程度で私が不登校にでも

なると思ったのかしら

・・まあ少し学校が怖くなったのは

事実だったりするんだけど、ね











結局、私への嫌がらせは

強く見せたい、という気持ちが

間違えた方向に空回りした結果








「あ・・・いいの別に。でももうしないでね」












仲直りの握手をして

私へのいじめは終止符を打った








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