長編(立海)

□隠しておきたい
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その子たちとその場で和解し

帰っていくのを見届けて

ハッとなる

隣には、びしょ濡れのなまえちゃん


これはいけない、と思って


とっさにハンカチを探す





「ご、ごめんね、私のせいで

あなたがびしょ濡れになっちゃったわね」







私は焦って謝罪をする




なまえちゃんには

さっきの子たちが必死にかぶせていった

タオルが首にかかっており

地面に置いてあったがカイロや手袋も預けられていた








なまえちゃんは洋服の水を、

冷え切ったであろう

真っ赤な手で絞りながら私を見て








さっきまでの怒っていた様子は

これっぽっちもなく優しくこう言った






















「辛かったね」
















どきん、と胸を突くその言葉と儚げな笑顔に




一気に何かが込み上げてきた





そしてそれは私の目から



「涙」として溢れ出た







「うっ・・・ひっく・・・」









冷たい頬に伝う温かい涙









どうして泣いているんだろう









いじめられたことが悔しかったから?





怖かったから?








いいや、違う











安心したんだ









私は一人じゃない










いつも言い聞かせていたことは





「見えない」言葉ではなく




"なまえちゃん"という




一人の女の子によって




「見えるもの」になったからだ











声をあげて泣く私をなまえちゃんは

泣き止むまで頭を撫でて宥めてくれた







抱きしめてあげたいけど、

お洋服びしょ濡れだから








と言って困ったように笑うなまえちゃんは

本当に天使のようだった

こんなにまで優しくて強い子がいるだろうか

そんな子が私を助けてくれた、

そのことがとても嬉しくて余計に涙が溢れた








しばらく泣いて、落ち着いた後




なまえちゃんは濡れた服に

コートを羽織りながら私に言った







「私の名前はみょうじなまえ、よろしくね」






私も、しゃっくりが止まらない状態ではあったが自己紹介した








「わたしっはっ、・・親友みょうじっ・・親友なまえって・・っいうの・・・よろしくっっねっ・・・っく」









「うん!じゃぁ親友なまえちゃんだね!

よろしくね!私のことはなまえでいいからね」






そういって笑いかけるなまえちゃん







友達はたくさんいるけど







なんだか初めて友達ができたかのような





そんな錯覚に陥るほど心が温かくなった













私はこの子と一緒にいたい




今度は私がこの子を守ってあげるんだ




何があってもこの子の味方でいよう




何があっても私がそばにいよう
















同時にそう心の中で決心した










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