magi short
□甘い香りと夜の潮風
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「あの...将軍」
「何だ?」
14日ももう終日経つ。
名前がドラコーンの散歩についていき声をかけた。
彼女の顔はまるで熟れた南国果実のようだ。
「? お主、顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「え!いえ...大丈夫です...」
「あ、...その、コレですが...」
いつも通りゆっくりとした動きでゆっくり喋る名前が、細く小さな手中から小さな包みを渡した。
いろいろ気になったところがあるが就中、香りにそそられた。
「これは?」
少し冷たい夜風にマントが靡く。
包みの芳香と名前の優しい髪の香りが漂う。
「お国柄が違いますが、14日にいつもお世話になっている方に、こうして菓子を贈るらしくて...その、将軍に」
名前の顔はもう限界であった。
涙まで漏れかけている。
指先も冷たそうだった。
それを見かねたドラコーンは、名前の手を優しく包み、それを受け取る。
「しょ、将軍!?」
「ありがたく頂こう。そのような風習を無知であったから、新鮮で嬉しい」
気のせいか、荘厳なドラコーンが微笑んだように見えた名前は、嬉しくて落涙する。
「良かったです。ありがとうございます」
小さな包からは、名前からの暖かい気持ちとほどよい香ばしさが溢れていた。