magi short

□白馬の皇子
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もう寝てしまっただろうか...?

白龍はシンドリア王宮内を彷徨く。
見た目はかなり怪しい。

俺は決めたのだ。
名前殿を煌帝国を連れていく。
つまり、俺の妃になるんだ。

そうと決めたからには"この機会"に気持を伝える。


この機会...


『国柄は違うが今日は好きな異性に気持を伝える日だったけな?』

『はあ』

『興味無しかよマスルール。弟子の...えーとなにジアナちゃん?に伝えないのかよ』

『...モルジアナ。先輩と違って下心はないっす』

『てめー!』


昼間聞いた、八人将たちの会話だ。
俺も以前小耳にはさんだことがある。が、真偽はわからなかった。
しかしこうして国境を越えた先でも伝わっているということは、確かとして受け止めて構わないだろう。

そういう訳で、名前殿に気持ちを伝えようという経緯にいたった。


「あれ?白龍くん、こんばんはだね」

「え!あ!こ、こんばんは...」


しまった!
この目の前の部屋にいると思っていたが、まさか廊下で会うなど...。

しかし、気持を伝えることに揺らぎはない。


「あ!あたしの部屋の前で...まさか泥棒?」

「違いますよ!俺はあなたに、伝えたいことが...」

「お?なあに?」


白龍より年上なのに、背が彼より小さい名前は、きもち上目でゆらゆら左右に揺れる。
戦うときは凛々しく、普段はマイペースな女官の名前は、いつでも愛らしい。

白龍はごくり、と意を決して、名前の肩を掴み抱き寄せる。


「名前殿、俺の妃になってください」


よし。
真っ直ぐ伝わったはずだ。

抱き寄せた時の心臓の鼓動が、彼女に伝わっていないか心配だった。


「...白龍くん」

「...はい」


声のトーンで、少し嫌な気がした。
おもむろに体を引き、顔を見ると、

名前は泣いていた。


「あのね、白龍く、あたし、嬉しっよ...!でもね、っ」


"でも"
聞きたくなかった。
から、またいつものように押してしまった。


「お願いだ...!俺はあなたが好きなんだ!凛々しく、しかしマイペースで素敵なあなたが!」

「白龍くん!」


名前を呼ばれ、気がついた時には唇が重なっていた。
彼女からだ。


「!」

「あたしねっ...白龍くん大好きなの、嬉しいの...!でもね、あたしみたいな、ただの女官で、皇子さまの妃なんか、いいのかなって」

「関係ないです!俺は、あなたが好きなのですから...愛してるんだ」


お互い気持がいっぱいいっぱいで顔が赤かった。
彼女の手が震えていた。
優しく包むと、またふたりは抱き合った。


「よろしくお願いします、皇子さま」




*前サイトでの企画モノです。

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