季節物。

□大輪大甘菜 side料理人。
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倒れて来た美人さんの体を受けながら、おれは、その場に腰を降ろす。
辺り一面に、白い花弁が風に揺られて、凪いでいる。
その白い花弁から花の香が鼻を掠めていく。
「あっ」
思わず、おれは声をあげると同時に、頭が、クラっと揺れる。


ん……?
あれは……、小っせい頃の、おれ……?
おれは、誰の手を引いている……?
だぁ〜っ、顔が見えねぇっ!!


頭を振り、周囲(まわり)を見回す。
「大輪大甘菜、じゃねぇか……」
おれは呟く。
そして、ゾロの顔を眺める。
こいつ、マジで、可愛いし、綺麗なんだよ、なぁ……。
そう、言やぁ、小っせぇ頃にも、なんか、似た様な事が、あった気がすんだよ、なぁ……。
何時だっけ?
それにしても……。
ゾロの……、美人さんの安心仕切った寝顔と来たら……。
あ、いや、気ィ失ってんだっけ、か。
いくら、おれの腕の中とは言え……、世界一の剣豪を目指してるのに、何だ、この全部預けきってる感じはぁっ。
しっ、知らねェぞ、起きてみたら、全部、着てるもん剥がされて、おれが喰っちまってる最中だったら、よぉ……。
でもな。
おれは、思うんだぜ?
ゾロ、てめぇのさ、その綺麗な寝顔をさ、守りてェ、てさ。
こうやって、てめぇの温かさを感じてるだけでも、幸せなんだぜ?
言っても分かんねェだろうから、言わねぇけど、さ。
そんな事を想いながら、おれは、ゾロの髪を撫でる。
起こさない様に細心の注意を払いながら。
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