季節物。
□パンプキンプティング。
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カチャ。
バタンッ。
開けたキッチンの扉を閉めた。
カチャ。
バタンッ。
もう一度、開けたキッチンの扉を閉めた。
カチャ。
今度は、左手に食材を抱えて、キッチンへ入り、気付かれないように、右手を背中で隠しつつ、扉に鍵を掛けようとして、止めた。
冷静な顔を装いつつも、心臓は早鐘のように波打っている。
煙草の煙をくゆらせつつ、買って来た食材を仕舞いながら、声を掛けたいが、どう掛けたものかを思案しながら。
「おいっ、コック、その頭、どうした?」
ゾロが何時もより小さな声で訊ねてくる。
──いや、ゾロ、てめぇ、てめぇのその格好のほうが、よっぽど、「どうした?」だろうがっ。ちっくしょうっ、コイツ、普通にしてても、綺麗で可愛いのに、何なんだ、その格好はぁっ!!
おかげで、このおれがっ、理解するまでに、2回も、扉を開け閉めしちまったじゃねぇかっ!!
ゾロに答える数秒間でそんな事を考えながら、
「あぁ、あぁ、これ?
船に戻る途中、ナミさんとロビンちゃんに会ってな。
付けて帰るように、言われた。
狼の耳だってさ。
と、頑張って〜っ♪、って、さ」
と、まだ、振り向かずに答える。
「………そうか」
──うおぉっ、おれには、分かるぞぉっ。
絶対(ぜってぇ)っ、ゾロ、今、てめぇは、顔を赤くしてるだろぉっ。
ハロウィン、万歳っ!!
ナミさん、ロビンちゃん、素敵なセンスで、ゾロをコーディネートしてくれて、ありがとうございますぅ〜っ!!
あの、「頑張ってね〜っ♪」は、こういうことかぁ〜っ!!
何時になく小さな声の愛しい恋人の声を聞きながら、顔がにやけてしまう。
食材を仕舞い終え、ソファに座っているゾロの隣に腰を下ろす。
「ゾロ、聞いていいか?」
ゾロの姿を舐め回すような視線で眺めながら、問い掛ける。
「……なんだ?」
羞恥に赤く染まった頬と上目使いと潤んだ瞳でサンジを見つめながら、聞き返すゾロ。
「ゾロ、てめぇ、なんで、そんな格好してんだ?」
にやけてしまいそうな頬と押し倒してしまいたい衝動を必死で抑えながら、努めて冷静さを失わないように、ゾロを見つめるのを止めずに、問い掛ける。
「あっ、とっ、こっ、これは……」
頬を真っ赤に染め、瞳を潤ませながらの上目使いで、慌てて答えようとする、ゾロ。
──おぉおぉ、照れちまって、可愛過ぎんだろっ、ゾロ。
まぁ、いい。
今夜は、たっぷり、時間があるんだ。
お楽しみは、ゆっくりと時間を掛けて、味わわなきゃ、な。
煙草の煙をくゆらせつつ、ゾロを見つめながら、サンジはそんな事を考えていた。