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□手合わせ
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アラバスタを出航し、海軍中将のヒナの追撃をやり過ごして、メリー号は、次の航路を行く。
「淋しいぞぉ、コノヤローっ」
そんな声を上げる船医──ヒトヒトの実を食したトナカイの側で、三本刀使いは、ふいに言う。
「おいっ、ウソップ、暇だろ?暇人クソコックと手合わせするから、審判しろよ」
「あっ、いや、ちょっと待て、ゾロ」
そんな気がしたから、その場から離れようとしていたんだ。
「余興だ、付き合え。おうっ、クソコックっ、どうせ、暇なんだろ?手合わせしようぜっ」
三本刀使いは、アラバスタの王女との別れで、仲間達が寂しがっているのに気付いて、こんな事を言い出したのだろう。
「ああんっ、誰が、暇だって、クソマリモっ」
勢いよくキッチンの扉を開け、料理人が怒鳴る。
「クソコック、てめぇ、肋折ったんだってな?鍛錬が足りねェからじゃねぇのか?手合わせと言えど、手ェ抜くつもりはねェ、本気で行かせてもらうっ」
「クソマリモ、てめぇがおれに勝てるつもりかよ?吠え面かくなよ?絶対ェ、ギャフンって、言わせてやるっ」
「ギャフン」
「って、やり合う前から、言うんじゃねぇての」
「ウソップ、合図」
三本刀使いと料理人のやり取りに呆然と見つめていたら、ふいに声を掛けられる。
「準備はいいか?」
甲板のメインマスト付近の甲板で、三本刀使いと料理人の丁度真ん中に立ち、問う。
「何時でも構わねェ」
「何時でも構わねェぜ」
三本刀使いは左腕のバンダナを頭に巻き付けながら、料理人は煙草の煙をくゆらせながら、ニヤリと笑みを浮かべている。
「Ready go!」
おれは半ば呆れつつ、合図を出した。
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