幻想浪漫譚
□暁を待て。
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宵之夜
時は中世。
まだ、モンスターが街や村の近辺を徘徊し、ハンターが退治を請け負っていた頃の話────。
とある地方のとある村に、吸血鬼(パンパイア)に悩まされている村あり。
「また、今月も……、か……」
「いったい、何人の娘が……、犠牲になれば………」
「しかも……、『純血を望む』等と……」
そんな村人の会話に割って入る男が一人。
「そいつぁ、許せねぇな。
単なるエロじゃねぇか。
乙女を恐怖に陥れる奴なんざぁ、おれが許さぁ〜んっ」
煙草の煙をくゆらせながら、黒の中折れ帽を被り、黒マントを翻し、黒手袋をはめ、白シャツに黒ズボンに黒靴。
腰には銀製の鉄筒(ピストル)と銀製の弾丸袋(タブレット入れ)、銀製の十字架。
金髪が顔の右半分に掛かり、左側しか見えていない眉毛が鼻筋の上でぐるっと巻いている。
口調は飄々としているが、眼光の鋭い男。
「あっ、貴方は……?」
「まさか……」
村人の視線がその男に集中する。
「あぁっ、これは、これは、美しいマドモアゼル。
僕のハートは貴女の視線で撃ち抜かれました。
願わくば、その美しい唇で、美しい言葉を聞かせて下さい。」
その男はそう言いながら、村人の中の御婦人の手を取り、口付けて、跪く。
「おぉっ、間違いない。
あの噂は真実だったのだ、すこぶる腕は立つが無類の女好きだというのは」
「あれが、噂の……、ハンター……、か」
噂のハンター。
彼の男がこの村を訪れた所から、この物語は始まる。