俺達親友

□episode2
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仁王が面白い奴を見つけたって言っていた。
それが幸村くんの女友達らしい。

丸「女友達ねぇ…」

ぷくぅとガムを膨らませる。
やっぱりグリーンアップル味は美味いな。

『わぁ、上手に風船作るんだね?』

丸「は…?」

『あたしなんかいつも口の周りベタベタになっちゃうもんなー』

いやいや、お前だれ?
いきなり話しかけてくるとかお前もミーハーなファンか?

丸「気安く話しかけんなよ」

『…』

そう言って立ち去ろうとしたらブレザーを掴まれた。

丸「離せ」

イラついて女の方を見ると…

丸「な、何笑ってんだよぃ?」

『あたし3年C組の五味 風月って言います』

丸「は…?」

なんで自己紹介?
話しかけんなって言ったよな…?

『幸村から丸井君の話聞いてて、友達になった気でいました。

いきなりごめん、ビックリしたよね?』

幸村くん?
ということは…

丸「お前が幸村くんの女友達?」

『うん、幸村の親友です』

俺に満面の笑みでピースをして見せた。

丸「あー…
酷いこと言って悪かったな」

幸村くんにチクられたら怖いので一応謝っておくか。

『あはは、大丈夫だよ?
幸村に言ったりしないから』

丸「なっ」

『あの人怒ると怖いもんねー』

呑気にケラケラと笑っている。
よく笑う女だな…

『幸村から丸井君の話聞いてるよ?』

丸「どうせ悪口だろぃ?」

『我儘でジャッカル君をこき使うけど面倒見はいいし、後輩が幸村には相談しにくいことでも丸井君には話せるみたいだから助かるってさ!』

丸「…」

最初のは聞かなかったことにする。

『だからどんな人なのか話してみたかったんだ!』

丸「そ、そっか」

『うん、幸村の友達とは仲良くしたいから』

そう言ってそいつはまた笑うのだ。
幸村くんの友達と知らなかったとはいえ、嫌な態度をとった俺に笑いかけてくる。

丸「怒ってねぇの?」

『何が?』

丸「最初のこと…」

『最初…?』

少し考えるそぶりを見せた後、分かったのかポンと手を叩いた。

『全然気にしてなかった!

あたしさ幸村にも言われるんだけど結構我が道を行ってるらしくてね?
ちょっとやそっとじゃ傷つかないのです!』

丸「ならよかったぜ!」

五味の話を聞いて俺はほっと胸を撫で下ろす。

『それにテニス部は女の子関係の問題多いからあんまり関わらないようにしてるんでしょ?』

丸「まぁな」

『幸村を見てたら分かるよ。
それなのにいきなり話しかけたあたしが悪かったんだし気にしないでね?』

丸「サンキュー」

まだ出会って少ししかたってないけど、幸村くんがこいつを選んだ理由がわかった気がする。

丸「あの、さ…」

『うん?』

幸「風月!」

『あ、幸村』

幸「探したよ、今日は俺の家に来るんだろ?
母さん達も楽しみにしてるんだから。」

『そうだそうだ、忘れてた!』

幸「まったく…
ブン太悪かったね?」

丸「いや、大丈夫だぞぃ」

幸「こいつすぐ余計なことをペラペラ喋るからさ」

『うっわ、めっちゃ失礼!』

さっきまで笑ってたかと思えば今度はプリプリと怒っている。
見ていて飽きないやつだな…

幸「ほら、帰るよ」

『わかったって!
そういえば丸井君さっきあたしに何か言おうとした?』

丸「え!?
い、いや、何でもないって!」

『そ?じゃあまた会ったら話しようね!』

幸「ブン太寄り道して買い食いしないようにするんだよ」

丸「うっ、ラジャー…」

『丸井君またねー』

幸「じゃあまた明日」

丸「おー…」

楽しそうに話しながら去って行く二人を眺める。
幸村くんが五味の耳元で何かを囁くと、もーという声が聞こえ直ぐにバシンと幸村くんの背中を叩く音がした。
そして2人の笑い声が廊下中に響き渡る。

丸「…」

正直幸村くんが羨ましいと思った。
だからあの時、五味に俺とも親友になってくれるかと聞こうとしていた。
そんな自分に驚いたし戸惑ったのだ。

今はまだ考えてもわからないけど…

『丸井君、バイバイー!!』

廊下の曲がり角で俺に向かって手を大きく振りながら笑ってくれる五味をもっと知りたいと思った。

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