とうらぶ夢

□思い出飾る、赤き紐
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 一部を編み込み、赤い髪紐で留めるように結わえた髪。
明らかに自分を真似たその姿を眺め、随分と上手くなったものだと思う。

最初の頃は上手く編めず、纏められず、手を貸して直していたというのに、今では主一人で事足りる。
けれどその頃と変わらず、同じ髪紐で彩られた髪に手を伸ばし、そろりと撫でた。



「…なあに、宗三?」

「髪紐、変えないんですか」



 時折異なる髪飾りを付けることは有っても、主が一番好んで付けるのはこの
髪紐だ。
丁寧に扱われているのか、目立った綻びの見受けられないそれを摘まめば、彼女は小さく笑う。



「変えたいと思わなくて。
大切な髪紐だから」

「僕が渡した物だからですか」



 思わず零した言葉だった。
けれど主はぎくりと身を強張らせ、分かりやすく固まる。



「……そうだよ」



 そうして絞り出すように紡がれたのは、明らかな羞恥を滲ませた肯定。
背を向けたままではあったが、その声色を聞き、じわじわと赤く染まる耳を見てしまえば、感情を伺うことは随分と容易い。



「宗三、覚えてたの…」

「…貴方こそ。
忘れていると思ってましたよ」



 平静を取り繕い、普段の調子を努めて返しながら。
どうか主が振り返ることのないよう、願わずにはいられなかった。



ー 思い出飾る、赤き紐 ー



(覚えているのはお互い様)

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再び固定夢主設定でした。
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