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□棺桶の男
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――――――――――……






†真昼宅†




「はあ…なんとか帰ってこれたな」


「あ――――…めんどくせ―――…なんでこんなことに…」

「…って、あれ?なんか忘れてるような…」



すると真昼のポケットから着信音が鳴りだした。
サッとポケットから取り出し、表示名を見てみると「ああああ―――――!!」と大きな声を上げた。






「っ…何だようるせーな…いきなり大声出して」

「…蒼、置いてきちまった…」

「はぁ?」





「…蒼?」


電話に出る真昼の第一声は「ごめん!!」だった。
相手もいないのに思わず頭も下げて…。




ごめん蒼!!俺達爆発の後すぐに離れたから!!」


『それより、大丈夫!?爆発に巻き込まれてない!?』

「い、いや…巻き込まれたんだけど、なんとか回避できたというか、してもらったというか…」

『怪我は!?怪我してない!?ほんとに大丈夫だべか!?』

「あ、ああ、大丈夫だって。今俺ん家に戻ってきてるから。あと方言」

『はっ…あ、クロは!?』

「ああ、クロもいる。大丈夫だよ」

『……そっ…か。……とりあえず、私もすぐに戻るよ。私も今お祭りの場所から離れてるから』

「おう、気を付けて帰ってこいよ?」

『うん』



真昼達が家にいると聞いてほっとした蒼は、直ぐにでも帰りたいと思いながら走った。
早く会いたいと願いを込めて…。
転びそうになりながらも、一生懸命に走り抜ける。

…そして。







ピンポ―――ン ピンポ―――ン



「あ、蒼かな」


直ぐ様玄関へ駆ける真昼。
ガチャッとドアを開けると、ゼーハーと息切れして胸を抑える蒼の姿。
思いきり走ってきたのが目に見えて分かる。




「蒼!?だ、大丈夫か!?つか、そんな全速力で走ってきたのか?!」


「ま、まひ…る、くっ………っわああああ〜〜〜〜ガバッ

「っ!!?」


真昼の姿を目にし、安心感から真昼に抱きつく蒼。
固まって動けなかったが「すごく心配したよぉ…良かったよぉ〜…」と泣きながらそう言う蒼に、ポンポンと頭を撫でてあげた。
本気で心配していたことが目に見えて分かる。
困ったように笑みを零す真昼は、「ごめんな、心配掛けて…」と言うと、蒼はゆっくりと真昼から顔を離した。




「ううん。無事で良かった…」


涙を流しながらも、にっこりと笑みを絶やさずに。
いつだって、この笑顔に助けてもらい、癒される…。
そんな笑顔を守りたい、と…守るためには強くならなければ、と…真昼はそう思うのだった。

そのまま真昼の家にお邪魔する蒼。
予想される展開、「「あ」」と、蒼と声が被った。
蒼は真昼が遭遇する前に顔を合わせていたのだから。

呼吸も落ち着き、一息つくとお互い自己紹介をした。






「そっか…真昼くんと同じだったんですね。ありがとうございます、千駄ヶ谷さん」

「別に敬語使わなくてもいいぜ。あと名字も長ぇし、鉄でいいから」

「分かった。よろしくね、鉄くん」

「俺も蒼でいいか?」

「うん、いいよ」


そんな和やかな会話をしながらも、鉄は右手に持つ猫姿のクロを離さない。
仕舞いには手ぬぐいを頭に乗せている。




「お前、うちの看板猫になるか?温泉宿にはやっぱ猫だよな――」


「はなせ〜〜〜〜…」

じたじたと暴れるクロに「喋った」と反応する鉄。





「オ――イ…嫌がってる嫌がってる」

「すっかり人気者だね〜」


カレーをよそう真昼と、人数分の皿とスプーンを出している蒼。
真昼も千駄ヶ谷と一度名字で呼んだが、蒼の時と同じく鉄でいいと返してくれた。
準備をしながら、真昼は鉄に問うた。




「今日の祭り…吸血鬼達が何か仕掛けてくるって聞いて来たって言ってたけど。そんなこと、どこで聞いたんだよ?」

「オレはよく知らねえ…ヒューが聞いてきたんだよ」

「『ヒュー』?」


鉄の手からなんとか抜け出したクロ。
ちょうど目の前に、スプーンを持ってきていた蒼がいて、助かったと嘆くようにジャンプした。
クロを受け止め、「大変だったねー」と言いながら床に降ろしてあげている。




「血も飲ませたし、そろそろ回復したんじゃね?ヒュー?」


鉄がそういうと、壁に寄せていた棺桶がガタ…と揺れ動いた。
探し物ってあれだったんだ……温泉…?動く棺桶を眺めながらそう思う蒼。
そして【白ノ湯温泉】と書かれた棺桶の蓋がギィ…と音を立てて開いた。




「当然じゃ…我が輩を誰じゃと思っておる?我が輩こそ由緒正しき“傲慢”の真祖(サーヴァンプ)…」


中から光る一粒の怪しい光…ゴクッと唾を飲み込むような雰囲気が包む。





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