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□棺桶の男
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ドン



「今の名をヒュー・ザ・ダーク・アルジャーノンV世!

 吸血鬼たるもの、この程度では動じんのじゃ!!


 慄き戦慄け!」ちまっ


唾を飲み込むような雰囲気から一気に変わった。
…小さかったのだ、雰囲気に似つかわしくない、棺桶の大きさと合ってない(笑)
勿論その姿に真昼も突っ込むしかなかった。




「…やっぱりかなりダメージ大きかったんだ…回復しきれてないじゃん…」

「あらやだ!かわいぃ♪」



シュタと棺桶に乗っかるヒューに「あぶないぞー」と警告する真昼の隣で、キラキラと目を輝かせて見ている蒼。
可愛いものを見た時の表情だ。
「この家は天井が低いのう!」その低いせいで、頭が横に傾いてしまう。
帽子を取ればちょうどなのでは?と思うのは伏せておこう。




「完全回復じゃ愚か者!!この恐ろしい吸血鬼たる我が輩を前に状況すら把握できんようじゃな!!

 そして探したぞ、スリーピーアッシュ!」



ピロリーンとゲームをしているクロに向かって言うヒュー。
「あ?えーと…お久しぶり…」クロは特に緊張感も何もなく返している。
そして何やら緊張感をまとい、何かを警告するような雰囲気を醸し出し、皆に伝えようとしていた。





「我が輩は…“傲慢”の真祖(サーヴァンプ)…」

「さっき聞いたよ」

「実は…今大変なことになっておるのじゃ」

「大変な、こと…?」


「お主が眠っている間に…世界は終末へのカウントダウンを… ……」


その先は…?
何だ…?

































「なーんじゃっ、いいにおいがすると思ったら食事どきであったか!

 話は後じゃ!冷める前に食すのが礼儀じゃのう鉄!」



「ヒューはいつもいいこと言うぜ」


「気になるよ!何なんだお前は!!」


しゅたっと座り、手にはフォークとナイフ。
ヒューの隣に座ろうとする鉄の目はどこかキランと光る。
気になる話は次の機会にて………って、気になる!




(…世界…終末への……カウントダウン…?)











「蒼…」

「へ?」


「…どうしたんだよ」

「あ、ううん。何でもないよ。さ、食べよ」

「……」


ヒューの言葉が気になった蒼。
すかさずクロが声をかけるが、蒼も直ぐ様笑みを取り繕い、テーブルの方に目を向けた。






「お〜!美味そうな匂いじゃ!」


「真昼くんのカレー、美味しいから沢山食べてね」


ヒューの隣に来てそう言った蒼。
言われた事に気付き、ヒューが横を見上げると蒼が立っていた。





「足りなくなったら、私が作るから」

「……」

「?」


ヒューの目が見開く。
石になったように身体が動かない。
蒼を見た途端、鼓動がドクンと大きく動き、動けなくなってしまったらしい。
ヒューも、クロやリリイ、ベルキアと同様、とても言い表すことのできない何かがまとっているのを感じた。
クロは黙ってそれを見ている…。




「…お主」

「?」


「何やら不思議じゃのう…お主がいると、気持ちが落ち着くというか…暖まるというか…とにかく不思議じゃ」

「……不快じゃ、ない?」

「いや、寧ろ気分が良いのじゃ!」

「…そっか」


ヒューの言葉にほっとする蒼。
にこっと笑い「沢山食べてね」と言うと、嬉しそうに「おお、沢山食べるのじゃ!」と返した。
皆席に着き、食事にありついた。




「…えっと…ヒューでいいのかな」

「“V世”まで名前じゃぞ!」

「なんだっけ…えっと…ヒューマン・ダーク・アルジャーンV世さん?」

「違うのじゃ!ヒュー・ザ・ダーク・アルジャーノンV世じゃ!」

「長いよ」


わいわいと賑やかに食べている。
蒼は一瞬、病院で椿達とお寿司を食べていた光景を思い出した。
思わずふと笑みを零す。




「吸血鬼たるもの、にんにくは嫌じゃぞ!吸血鬼たるもの、食事には赤ワイン!

 イスが低くて食べにくいのう!!」


「あ、座布団用意するね」カタン

「取ってやるよ。どれ食うの」

「吸血鬼たるもの、サラダよりも…」


「…お前、ワガママだけどダントツで吸血鬼っぽくてなんか安心するよ」




「コーラくれ」

「自分で入れろ(怒)」


「座布団持ってきたよー。あ、クロ、私入れてあげるよ」

「いいって蒼!甘やかすな」

「…いや、蒼は少し体力をつけた方がいい。つーことで、コーラ入れてくれ」

「…そうだね。人間たるもの、体力は大事だね。肺活量だけ良くてもダメだよね。うん、入れてくる」

「騙されるな蒼!クロはめんどくさがりなだけだから!」




「……ふむ…」


まじまじと蒼を見つめるヒュー。
せっせとコーラを入れている姿を見つめ、イスが低いと言っていたのが聞こえたらしく座布団を持ってきてくれた蒼を思い出す。
うんうんと頷いていた。





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