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□雪のような転入生
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「も、もしよければ、一緒にご飯食べる?おかずいっぱいあるから一人増えても大丈夫だし、叔父さん今出張中だから余っちゃうしさ」
「……いいの?お邪魔じゃない?」
「い、いいよ全然!邪魔なんかじゃないしっ!せっかく隣に引っ越して来たんだから、色々話したいし!」
「…うん、ありがとう。じゃあ、着替えて片付けたら行くね?」
「分かった」
「じゃ、また後でね」
その後、真昼宅へ行った蒼は、夜ご飯を共にしながらお互いに色々話した。
学校の事や、龍征と虎雪の事、今の授業はどこまでやっているのか.
そして蒼は前に住んでいた場所の良い所、授業の進み具合、お互いの好きなモノや嫌いなモノ、得意科目と苦手科目、自分のモットーなどなど。
時間はあっという間に過ぎてしまっていた。
蒼が自分の部屋に戻るという事で、真昼が玄関まで見送ってくれた。
「ごめんね?夜遅くまでお邪魔してて」
「いや、大丈夫だよ。そんな気を使わなくても、隣同士だしさ」
「…そうね、ありがとう。夜ご飯、ご馳走様でした。美味しかったよ。
今度は、私の部屋に来てね?次は私が御馳走するよ♪」
「ありがとう、じゃあ今度お邪魔するよ」
「うん!私頑張って作るから!」
ガッツポーズで蒼は言った。
何だか微笑ましく、真昼は思わずクスッと少し笑って「楽しみにしてるよ」と返した。
「じゃあ、お休みなさい」
そう挨拶をして出て行こうと真昼に背を向けたその時…。
「あ!」
思わず声を上げる蒼。
「ん?どうした?」と問い掛ける真昼に、蒼は振り返って答えた。
「雪だよ!雪!」
「え?…っ!わあっ、雪だ!」
目の前に見えたものは、しんしんと降り始める雪。
「どうりで、昨日から冷えると思った」そう言いながら外へ出て、蒼の隣で雪が降る空を見上げた。
真っ暗な空から白くふわふわと舞い降りてくるその光景は、とても神秘的に見えた。
美しく、まるで雪の世界に招待されたような気持ちになる。
キラキラと目を輝かせているように見ている真昼を、蒼は微笑みながら見つめた。
「真昼くん」
「ん?なに?」
呼ばれた真昼は蒼の方へと顔を向ける。
正面に向き合い直した蒼は、小さな手をスッと差し出した。
「これからよろしくね」
にっこりと微笑みながら、蒼は言った。
その言葉に、真昼も笑みを浮かべ同じように正面を向けた。
「ああ。こちらこそ、よろしくな!」
差し出された手をぎゅっと握り、握手する二人。
二人の絆はここから始まった。
―――――これが、二人の出会い…―――――
―――――…ここから、雪と共に現れた少女の物語が始まる…―――――
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