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□引きこもり吸血鬼
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   #01.引きこもり吸血鬼





月日は流れ、15歳になった。
とある日の学校の帰り道、真昼は一匹の黒猫を見た。
人々は、まるで見えていないかのように道端を横切っていく。
弱々しく倒れていて、か細くにゃ〜…と鳴くその猫は今にも踏まれそうで…だから拾ったのだ。






     ―――――シンプルなことが好き 面倒なことは嫌い―――――







猫を抱き抱え、マンションに辿り着く。
自分の部屋へ向かうと、先に帰っていた私服の蒼が外で待っていた。





「蒼!」


「あ、真昼くん。おかえりよ〜」

「なんだよ、おかえりよ〜って。っていうかどうしたんだ?中入ってればいいのに。今日は部活休み?」

「うん、休み。あのね?おかずをおすそ分けしたいなって思って。すれ違うといけないと思って待ってたの」

「すれ違うって、隣なんだからすれ違うも何もないだろ?」

「…あ、確かに」


えへへと照れ笑いをする蒼に、やれやれと思う真昼。
すると蒼は、真昼の腕に抱かれているそれに気付いた。



「あれ?真昼くん、その猫くん…どうしたの?」

「うん、道で倒れてて…拾ったんだ。弱ってるみたいだったから」

「ホント…震えてる」


そっ…と優しく、その黒猫に触れる蒼。
「早く中いれてあげよう?」と言い、おかずもある為真昼宅に蒼もそのままお邪魔した。








「俺こいつ洗ってくるよ。なんかすげー汚れてるし」

「じゃあ私、お夕飯の準備するよ」

「ああ、サンキュっ」



ガサガサッ

「えっと〜……あ、今日カレーだね?」

「ああ。洗い終わったら俺も手伝うからさ」

「うん、いってらっしゃ〜い」


真昼は腕に黒猫を抱いたまま風呂場へ連れて行った。
見送った蒼は、キッチンに持ってきたおかずを冷蔵庫に入れ、袖を捲って料理の準備を始めた。
こうして真昼の家で料理をすることもある為、エプロンは置かせてもらっている。
水色のチェックが爽やかに彩るそのエプロンを、首にかけて後ろできゅっと結んだ。






「さあってと、やりますか!」


気合を入れてカレーの具材を包丁で切り始めた。
トントン…まな板を包丁が叩く一定の音が静かにリビングに響く。
終わるとリビングの扉の向こうからシャワーの音がする。
(洗ってるんだ…猫くん、凄く弱ってたみたいだけど大丈夫かな…?)そんな心配をしながら着々と料理を続けた。

しばらくすると、風呂場から真昼と黒猫が戻ってきた。




「終わった?」

「ああ。おとなしかったから楽だったよ」

「へぇ〜。猫くんなのに珍しいね。水好きなのかな?」

「さあ」


そう言い、真昼は持っていた袋から何かを取り出した。
「何か買ってきたの?」尋ねる蒼に「猫といえばこれだろ?」と取り出したのは…。






「鈴付きの首輪?」

「そ。せっかくだからさ、買ってきたんだ」

「猫くん持ってようか?」

「ああ、サンキュ」


蒼は真昼から黒猫を受け取り、真昼は首輪を着けてあげた。
チリンと可愛らしい音が鳴る。





「これでよし…と。名前は…クロ!

名前を決めてすぐに蒼から黒猫を軽く抱き上げ、嬉しそうに呼ぶ真昼。
そんな姿を見て、蒼も微笑ましく感じた。




「ふふっ。真昼くんらしいね」

「む…いいだろ!?」

「うん、いいと思うよ。シンプルイズベスト!」

「だろ?」

「うん!…よろしくね?クロ」


優しく頭を撫でる蒼は「あ」と小さく声を出した。
ある事に気付いたのだ。





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