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□引きこもり吸血鬼
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「真昼くん着替えてきたら?」

「あーそうだな。じゃあ着替えてくるから」


そう言いながらソファーに黒猫をゆっくり下ろした。
真昼が着替えに行っている間、蒼はソファーに小さく丸まっている黒猫の前で同じ目線になるようにしゃがんだ。
黒猫は目を閉じてのんびりくつろいでいる。
その姿があまりにも可愛くて、蒼は優しく触れて撫で始めた。
乾かしたばかりか、毛並はとてもふわふわとしていて触り心地も良い。
黒猫もまた気持ち良さそうに目を細め、そして手に擦り寄ってきた。




「かわい〜ぃ…」


洗ったばかりで香りもふわりと漂う。
更に近付く蒼は黒猫の頭に鼻をくっつけて、スン…と嗅いだ。
蒼は「良い匂いだね〜…」と頬を緩めて笑顔を浮かべ、黒猫は漸く目を開けたと思ったら蒼をジィ…と見つめる。





「お風呂気持ち良かった?毛並みふわふわしてて気持ち良いね♪」

「………」

「香りも素敵だし、真昼くんに拾われて良かったね。後でミルクあげようね〜♪」


見る人をほっ…と安心させるような柔らかい笑顔。
蒼は真昼が着替えから戻ってくるまで優しく撫で続けた。




ガチャッ

「悪ぃ蒼、待たせたな」


「ううん、大丈夫よ」

スッと立ち上がり、エプロンをかける真昼の元へ。




「どこまでやった?」

「野菜とお肉は切ったよ」

「じゃあ後は作るだけだな。後は俺がやるから、他の用意してくれるか?」

「は〜い」




真昼を加えて再び夕食の準備に取り掛かった。
テキパキとこなし、着々と用意が完了していく。
和やかに夕食を始める二人と一匹。









     ―――――だが、そのペットを飼うのは命懸けだということを、知るのは翌日のことだった―――――

































そして翌日の午後の時間、それは東高文化祭に出す喫茶店の係決めを行っている、ある一クラス。




「え―――、文化祭でやる喫茶店の係決めも、あと衣装係を残すのみなんですが…」


裁縫なんかできない、誰が出来るの?などと騒いでいる中。

「真昼はー?真昼。あいつ、一人暮らしで家事全般完璧よ?」
「真昼はもう調理隊長に決まったじゃん。すでに試作中…」
「真昼くん、一人で大丈夫かな…?やっぱし手伝いに行けば良かった…」
桜哉、虎雪、蒼と続き、でも他に誰かー…と嘆く中、教室のドアが勢い良く開いた。




ガラッ


「めんどくせーなあっ!いつまで係決めやってんだよ!?」




「あっ、真昼!」

調理隊長こと真昼がクッキー試作から戻ってきた。
わっと皆がクッキーに集まる。




「わあっ、いいにおい!!」
「うまそう!!」

「並べ!!全員分あるから!!」



皆が試作のクッキーが美味しい、美味いと好評。
頬を紅潮させ、普通のバタークッキーなのにプロなの??と言ってしまう程の絶賛だった。




「シンプルイズベスト!で?あと何の係が決まんねーの?」

「えっと…衣装係、か…」

「衣装係?シンプルに決めちゃえよ!」

「私やろうかな…」

「蒼は駄目だって!部活忙しいだろ!?」

「でも私以外にも部活やってる人いるし…」

「う〜ん…」


「シンプルに考えて…裁縫とか得意でヒマそうな奴…時間かかりそうだし…」皆が頷く中、「俺だろ!!よし決まり!!」と自ら衣装係になる真昼。
どんと自分を係に決め、わぁい待ってましたあっと皆が盛り上がる。
そんな中蒼だけ(一人で大丈夫かな…)と心配そうに見つめていた。




放課後、真昼を含めいつもの4人メンバーと、同じ帰り道の蒼も一緒に帰路についた。
体育祭でも一人で引き受けた事があり、それを虎雪は心配するが、結局誰かがやらないともめるのが面倒ということで引き受ける真昼。
そんな真昼に「さすがです真昼様!」とにやけた笑顔で言う桜哉。


「でも真昼様。お一人じゃ大変なこともあるでしょう?幼馴染として手伝いましょうか?針に糸も通せませんが」

「逆にめんどくさい、一人でいい!」

「真昼くん、私手伝うよ?一人じゃ大変でしょう?私は針に糸を通せます!」

「そーだな、蒼には手伝ってもらおうかな」

「わっ!なにこの違い!差別だ差別!オレは今日真昼に一人剥奪されましたぁぁぁ!!

「うるせー桜哉!!」


そんなやり取りが終わった後、桜哉は質問をする。





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