Word

□椿
1ページ/8ページ




   #02.椿





「お前みて―な奴が、一番めんどくせーんだ…でもしょうがねー、お前がイヴ(主人)だ」

クロの手は見た事も無い鋭い爪に形が変わっている。
鎖に繋がれたクロの姿を見て、手品師は面白そうな玩具を見付けたような笑みに変わった。




「…困るなァ〜〜〜〜契約しちゃったァ…ああでも…へェ、真祖は契約するとそうなるのかァ…」


    SERVANT

      +VAMPIRE

         =SERVANP



 SEAVANT  VAMPIRE     SERVAMP
「下僕の吸血鬼 サーヴァンプ…」


「にゃあ」





「「サーヴァンプ…?」」

真昼と蒼は繰り返すようにその単語を発する。








     ―――――SERVAMP…―――――



(!……何だろう………聞いたこと、あるような…)



真昼の家でもクロが言った“SERVAMP”という言葉。
クロと真昼が言い争う中、蒼は心の中で復唱した。







「サーヴァンプ。イヴ(主人)と鎖で繋がれている間しか力を発揮できない不便な真祖〜〜〜

 しかも人間の言うこときかなきゃいけないとかめんどくさそォ〜」



ケラケラ笑いながら言う手品師に、クロは「いや…そこは案外悪くねーぞ」と反論した。
思わず蒼は「何で?」と聞いてみる。




「オレが何したって「こいつがやれって言いましたぁ」って言い訳できるしな。責任のない人生は最高だ

「素晴らしいっ」

「だろ?」

「ふざけんな」


キラキラ輝かせながら語るクロに、いいかげんにしろと真昼は怒りをあらわにする。
苦笑する蒼に手を出し、真昼は蒼を立ち上がらせてあげた。
「つーかお前!なんで同じ吸血鬼なのに襲ってきたんだよ!?」指を指して質問をぶつけた。
シルクハットを左手に、いかにもバカにしてるような態度で「ボク?ボクの話聞きたいの?!」と返した。





「ん〜〜?ボクはお使いで来たんだよォ」

「…お使い?誰の…」


「吸血鬼はみんな、7人のサーヴァンプ(真祖)の誰かから作られてて、自分を作ったサーヴァンプ(真祖)に従うことになってる

 ボクが従うサーヴァンプの名前は“椿”










「……つばき…?」





「?……蒼…?」


「“椿”は“キミ(怠惰)”が大嫌い★さァここで問題です〜“椿”が“キミ(怠惰)”を嫌いな理由は何でしょォか〜?」
シルクハットから剣を出す手品師。
獲物を捕らえるかのような鋭い瞳を輝かせながら、すかさず剣を真昼に向ける。
「答えは30秒後ッ串刺しの後ッ★」剣を振り下ろすが突き刺されることはなかった。






「な……っわあっ!?」

「へっ…!?」

手首で繋がれた鎖を引っ張るクロのお陰でなんとか免れた。
蒼もようやく、自分がクロに担がれているのだと理解した。






「クロ!!」

「わわっ!飛んでる…っ!」

「…めんどくせー自分で避けろ、飛べ」

「飛べるかっ、俺は人間だっ」


ストッと着地するクロに対し、引っ張られ宙に浮いていた真昼は、支えなく重力に逆らえる筈がなく、地面にどてっと落ちた。

「あいてっ」





一方、クロに担がれていた蒼は、スッとゆっくり降ろしてもらった。


「ん…」

「あ…ありがとう」

「めんどくせーことになったなー……どーすんだ?やっぱ逃げたほうがいいんじゃ…」


先ほどの龍征の事を思い出す真昼。
そんな真昼を心配そうに見る蒼。
二人の様子を伺うように見るクロ。
真昼は焦りを見せながらも、答えを絞り出すように、だがはっきりと言った。






「…倒すよ!」

「は―――――……少年マンガの読みすぎだな…」


頭を掻きながらめんどくさそうに言うクロ。
ちらりと蒼を見やる。
視線に気付いた蒼は、首を傾げた。
すぐに視線を逸らすクロは下を向きながらぼそっと呟いた。








「向き合いたくね―――――…」



クロの纏う雰囲気が変わる。
近くに居た三人も驚きを隠せない。
クロの瞳は、先程とは打って違い、冷たい視線になっていた。







「さっき…言ったよな。…今からオレが何をしようが、オレに責任はねえ」


さっきいた場所に、クロの姿は既にない。
手品師の方を見ると、そこにはクロの鋭い爪が手品師の身体を抉っていたのだ。
手品師からザアアアァっと血飛沫が飛ぶ。
ドチャっと倒れる手品師、真昼と蒼にはその血飛沫がまるで血の雨が降り注がれているように見えた。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ