Word
□椿
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―――――あれ? えっ? おい何だよ、次から次へ 誰かシンプルに 説明してくれよ―――――…
「真昼くんっ!?しっかりするべさ真昼くん!!真昼くんっ!!」
蒼の呼びかけに答える事なく、真昼はそのまま気を失った。
真昼が倒れ、蒼は直ぐ様駆け寄るが、気を失っているだけだと分かると、ほっとして自分自身も気を失いそうになった。
めまいが蒼を襲う。
ふらふらと身体が揺れ始め、仕舞いには倒れそうになった。
ポスッ
「…へ?」
地面への衝撃が無いことに、蒼は意識が少し戻った。
自分を受け止めた何かに目を向ける蒼。
するとそこには、一人の男性が蒼を支えていた。
?と飾す蒼に、その男性は声を掛けた。
「大丈夫ですか?もし宜しければ、私がひと肌脱ぎましょうか?」
とても綺麗な顔をしているが、ただでさえ胸元が見えているのに付け加えスルリと服をはだけさせる露出狂、金髪の見た目ホストがそこにいた。
だが蒼はキャー!などと叫ぶことなく、整った綺麗な顔立ちとスタイルに思わず頬を染めていた。
まるで時間が止まってしまったかのように動かない蒼。
何も反応しない蒼に対して、男性も流石に「あ、あの〜…」と声をかけた。
「はっ!す、すみません!思わず見入ってしまいまして…。とても綺麗な方ですね」
「……」ポカン
「でも、あの、あんまりお洋服を脱いでいたら、風邪引いちゃいますよ?」
「いえ、あの…困りましたね。いつもでしたら…脱ぐなキモイ!!って突っ込まれるのですが…」
「そ、そんなことないですよ!なまら綺麗なお身体だと思います!」
「(なまら?)…あ、ありがとうございます。何だかこちらが照れてしまいますね」
「でも、ずっと脱いでいたら風邪引いてしまいますから!…はっ!も、もしやこれが俗に言う…あの有名な!!」
「?ゆ、有名な…?」
「露しちゅ狂!!」※露出狂
「……」ポカン
「あ、噛んじゃった……っえ、えっと、露しちゅ…りょしちゅ!」
「…あ、あの…私は別に露出狂ではありませんよ?」
「露しゅちゅ狂!」
「…」ポッカーン
結局言えず仕舞い。
何度言おうとしても言えない“露出狂”。
嗚呼、文章ならこんなにも簡単に言えるのに…。
噛み続ける蒼の言葉に、男性は冷や汗を垂らすしかなかった。
「…わ、私“色欲”の真祖で、スノウリリイといいます。今貴女が抱えているその黒猫さんと同じ、サーヴァンプですよ」
「しき、よく…?サーヴァンプ?じ、じゃあ、クロと同じ…?」
「はい、同じです」
にこりと微笑み返す、スノウリリイと名乗る男性。
「先程はお褒め頂き、光栄です」そう言いながらスススと服を元の位置に戻す。
「あ、あの…」
「はい?」
「寒くないのですか?その、胸元…」
「…ええ、大丈夫ですよ。それより、貴女の方は大丈夫ですか?顔色が悪いですが…」
「いえ、私は…それより…」
蒼は倒れて意識を失っている真昼の方を見やる。
とても心配そうに見つめる蒼の様子を、リリイは(お優しい方なんですね…)と思いながら見つめていた。
「さっき倒れてしまって…どうしよう」と困っている蒼。
そんな蒼達を放っておける筈もなく、リリイは手を差し伸べる。
「手を貸しましょう。貴女一人じゃ大変でしょうし、貴女も具合が悪そうです。ここは私が、ひと肌脱ぎますよ?」
「よ、よろしい、のですか…?」
「勿論♪」
「…あ、ありがとうございます。えと…りょしつ(露出)……ス、スノウ、リリイさん」
「……あはは。リリイで結構ですよ、雪見蒼さん♪」
「え?……何で私の名前を…」
「ふふっ、聞いていましたから」
「?聞いていた?」
リリイの言葉に理解がおっつかない蒼。
「もしかして…」と始める蒼に、リリイは言葉の続きを待っている。
・・・
「超にょう力者しゃんですか!?…さんですか?」
「………」
思わずポカンと口を開けてしまうリリイ。
さっき、その黒猫さんと同じサーヴァンプだって言いましたよね、私。
そんな気持ちだった…いや、そう突っ込みたい勢いだった。
…そして、またも噛んだ“超能力者”。
さ行が続く為噛んだ。
「ん〜……違いますね」
「…違うのですか?」
「はい」
「そうですか…」
「…行きましょうか、早く休ませてあげましょう?立てますか?」
「あ、はい」
リリイの言葉でゆっくりと立ち上がる蒼。
まだ頭がふらふらするも、早く真昼を休ませてあげたいという思いで歩き始めた。
背負われている真昼のこともチラリと見るが目を覚ます気配がない。
直ぐに視線を帰路に戻す蒼に、リリイも気付く。
「蒼さん蒼さん」
「へ?」
「ここ、ぎゅーってなってますよ?」
「…あ」
眉間の所に指を指し、シワが寄ってる事を教えるリリイ。
いつの間にか寄せていた眉間のシワ、こしこしと眉間をこする蒼。
最初に交わした言葉といい、反応といい、言葉の噛み続きといい、さっきの超能力者発言といい、この仕草といい、何とも天然で可愛らしい。
そんな思いを胸中に「貴女には、笑顔がお似合いですよ」と微笑んだ。
「大丈夫です。吸血鬼は丈夫ですし、真昼くんもきっと直ぐに目を覚ましますよ」
「…リリイさん…(真昼くんの名前まで…)」
「リリイで結構ですよ?」
「はい、リリイさん」
「……」
呼び捨てで構わないという意味で言ったのにも関わらず、さん付けが離れない蒼。
(まぁ、仕方ないですね…)そんな思いを余所に、蒼はリリイを再びじっと見つめた。
視線に気付くリリイは「何でしょうか?」と聞いてみる。