Word

□7+1
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「…ねぇ。サーヴァンプは何人兄弟か知ってる?」


「えっ?…7人…って聞いたけど…?」

「じゃあ7+1は?」

「は!?」


なんともまあ奇天烈な質問をしてくるのだろう。
「…8…?それが何?」そう返す真昼。



    
「そう、8人。僕は8番目の真祖、“憂鬱”のサーヴァンプ。通り名は“フーイズカミング(招かれざる8番目)”。実は末っ子なんだよ、兄さん?」


「…はち、番目…?」

「…八番目…!?兄…って、クロのほうが年下…に見える…けど…?」


確かに、クロのほうが年下、椿のほうがお兄さんに見える。
多分誰がどう見ても…。
クロは再度真昼の後ろに隠れながら「外見は関係ねーよ」と教えてくれた。




「吸血鬼は老けねーし…あとオレ、ちょっと若く見られるんだよな」

「知らねーよ!!」


どーでもいーと眉間にしわを寄せる真昼を余所に、蒼はもんもんと考え込む。
若く見られる?なら本当の年は?
外見的には高校生より少し上に見える。
でも大学生っぽくもない、いや、実は30代間近のオヂサマ的な感じ?
いやいや、ちょっとって言ってた。
なら、やっぱり20代前半?あ、20代手前?きっとそうに違いない。
…実はその裏をかいて40代だ!うん、そうに違いない!!




「…おい蒼、何を考えてるんだ?」

「分かったべさ!40代でしょ!?」

「はあ??」


訳のわからない返事に、クロもなんと返していいか向き合えない。
いや、これは誰もが向き合えないだろう。




「…でもオレは、こいつ見たことねーぞ…?」


すると椿はトンッと飛び上がり跳躍する。
「ねぇ、他のサーヴァンプには会ったかい?」くるりと一回転すると、影は小さく変わり落ちてくるその影、蒼の肩にコンと乗っかった。
大きい尻尾が二つに分かれ、口元・両手足・尾の先が白く全身黒い毛で覆われた動物。






「き、狐…?」



「……そう、僕は狐だよ?」


着地した肩から背中へ。
いきなりのことで肩を上げる蒼。
動物になった椿は蒼の肩の上でくるくると、まるで遊んでいるように回り続けた。
すると動きは止まり、耳の近くでこそっと椿が呟いた。











「……ずっと、待っていたよ…」




「え…?」

椿の言葉に目を見開く蒼。
どういう意味なのだろう?その回答も貰えないまま、今度は真昼の腕へコンと着地する。






「蝶とか蛇とかいろいろいるよ?」


猫の姿になっているクロと、真昼の背中の上で尻尾をべしっべしっと叩き合った。






「なっ…。いててててっ、人の上でケンカすんなっ」

そしてコンと鳴き、またくるりと一回転する椿。
それを見た真昼は犬と勘違いをする。



「犬…!?じゃないか、しっぽ…」

「…あはっ。ひどいなあ、狐だよ?」
人の姿に戻る椿は、下駄をコンッと鳴らし着地した。



「あははははっ犬だなんて!!あっは!!あはははははははははは」

「何だよっ、何がそんなにツボだった…」

真昼が頬を紅潮させながら言っても、椿は笑いを止めない。
だが先ほどと同じようにピタっと止まり「あ――――面白くない。」と口元に袖を添える。
ふう…と溜息付きで。




「…なんかこいつ、すげームカつくな」

「まあまあ、落ち着いて真昼くん」


苛立ちを見せる真昼をなだめる蒼。
よじよじと上る猫のクロと目が合う蒼はどこかぎこちない笑みを見せる。
椿に何か言われたのか、どうした?と言いたげなクロだが、それを余所に真昼は椿に叫びかかる。




「お前っ、クロの兄弟ならどうしてクロを攻撃するんだよっ」


「?人間だって兄弟ゲンカするじゃない」

まるでなに当たり前な事を言っているんだ?とでも付け足しているような表情をする椿。





「そいつは昨日、椿に言われて来たって言ったんだ」

「おいおい…」

「お前が…俺たちや他の人間を襲うように言ったのか」




「お前…こいつと話あんの?じゃあオレその辺で待ってるからごゆっくり…オレ関係ないんで」

「ちょ、ま、待ってよクロ!人の話は最後まで聞かないと!」

「いや、オレ関係ねーし…」


人の姿に戻っていたクロがそそくさと立ち去ろうとするところを、蒼は引き留めようと声を掛けた。

すかさず真昼はクロの服を引っ張り「逃げんな」と引きとめる真昼。





「戦争しよっかって何だよ…シンプルに答えろ。『吸血鬼』って噂の通り魔も…お前の命令か?」

「…真昼くん」


「…“椿”。人を殺してるのか?」


椿は冷やかな笑みを露わにした。
真昼の質問にまるでそんなの関係ないとでも言っているかのように…。





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