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□アリス・イン・ザ・ガーデン
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#04.アリス・イン・ザ・ガーデン
「はぁ…めんどくせーけど…お前と一緒にここで暮らすのは仕方ねーとして…」
だら〜〜〜…とテーブルに顔を乗せてフォークを含ませながらテレビのリモコンを点けるクロ。
その前で紅茶を飲み、のんびりと真昼の用意を待つ蒼はクロと一緒にテレビを見ていた。
因みに蒼は、隣人としてちゃんと自分の部屋に住んではいる。
だが朝は基本的に真昼の部屋へ行き、自分専用の大好きな紅茶を飲みながら準備を待つのが日課となっている。
「オレからもいくつか条件がある…。今日のお天気…晴れか…くそ…」
「良かった〜。お洗濯物、お日様の匂いでいっぱいになるよ〜♪」
ばたばたと慌ただしくする真昼は「そんだけくつろいどいていまさら何だ!!」とブレザーを着てさっさと準備をしている。
そんな真昼を見て、蒼はどこか心配そうにしていた。
色んな事があり過ぎて、真昼も蒼も疲れがあまり取れていない。
だから今の現状、ばたばたとしていることもまた事実。
「さっさと食って片付けろよ!!」
「今日から学校は火曜と木曜も休みとする…これが1つ目の条件…」
「しねーよ!!」
「オイ…一週間のうち3日も外出すれば十分だろーが…活動的すぎ…」
「このニート吸血鬼!!」
「ダメよクロ。3日じゃ逆に足りないんだよ?人は5日外出して、外の空気をいっぱい吸ってお日様浴びて元気にいかないと」
「オレ吸血鬼だからそんな必要ねーの」
「あそっか。じゃあお月さまの光を浴びないとね」
「蒼も!!真面目に答えなくていーから!!」
カーテンを開けようと窓に近付く真昼。
「早く食えよ、学校行くぞ!クロ!蒼もカップ片付けて!」
「はーい」
「あとカーテンは開けるな。いっそ遮光の為シャッターを設置…」
「カビ生えるぞ」
容赦なくシャッとカーテンを開けた。
陽の光でクロは「に゛ゃ〜〜〜〜っ」と鳴きながら猫の姿に変わる。
そんな様子をカップを洗いながらくすくすと笑い、蒼は見守っていた。
「ほら行くぞ!クロ!」
「めんどくせー…」
「ファイトだよ!クロ!」
そして慌ただしく学校へ向かう。
学校では文化祭の準備で、ここでも皆が、ばたばた、わいわい、と慌ただしくしている。
看板を作ったり、荷物を運んだり、作業が皆の手で行われている光景がそこにあった。
「真昼くん、私演劇部の部室に行ってくるね。宣伝用の看板に塗るペンキ無くなっちゃって…分けてもらえるか聞いてくる」
「おう、気を付けろよ?コケんなよ?」
「はーい。じゃ行ってくるね」
「おう」
教室を出て行く蒼は演劇部の部室へ向かった。
因みに蒼は帰宅部の真昼と違い、コーラス部に所属していて、一年生でソロパートを担当している。
音楽室と近い演劇部の人たちとも仲が良い。
「すみません、ペンキを分けて頂きたいのですが…」
顔が利くというのは、なかなか役に立つ。
衣装係の人も、心良くペンキを分けてくれた。
蒼は急いで教室へ戻ろうと小走りで向かった。
……そんな時…。
「早く、これ、教室持って、いかないと……あれ?」
もうすぐ教室というところで、蒼は思わず立ち止まった。
目の前に、自分の学校の制服とは全く違う制服を着ていた男子が、戻ろうとしていた教室を見ていたのだ。
蒼は迷うことなくその男子に話しかけた。
「あの〜、何か御用ですか?」
「!…貴様、誰に話しかけていると思って…っ!!」
(!…わぁ…綺麗な顔〜…)
声を掛けられ、蒼の方に振り向きながら発していた言葉が途中で止まった。
蒼も整った顔立ちに思わず頬を紅潮させる。
硬直するその男子に、蒼は何故動かないのか不思議に思い顔を覗きこんだ。
後ろへ後ずさる男子、蒼はそんな様子も顧みず、ニコッと微笑んで話しかける。
「こんにちは。綺麗な顔ですね」
「なっ…!!」
「ここの学生さんではないですよね?うちのクラスの、誰かに御用ですか?」
「っ……城田真昼に、というより、アイツの所持しているものに用がある」
「…真昼くん?」
一呼吸置き、真昼に用があると言われて、思わずキョトンとしてしまった。
見知らぬ男子の口から、真昼の名が出たのだから。