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□アリス・イン・ザ・ガーデン
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「あ、じゃあ呼んできますね」
「っ!ちょっと待て!」
「?」
中に入ろうとしたが、呼びかけによって足を止める蒼。
首を傾げ、一体なんだろう…そう思いながらじっとうかがった。
顔を背けて男子が何か言おうとしている、が…。
「……貴様」
「(き、貴様…!?)…は、はいっ」
「……名前。貴様の名前は」
「…名前?」
一瞬ポカンとしてしまう蒼。
いきなりの貴様呼ばわり、何か言われるのではないかと思っていたが、普通の質問にポカンとしてしまったのだ。
偉そうな言葉遣いはともかく、蒼は安心したようにふと笑みを零した。
「私は蒼、雪見蒼。一年生です。私も、宜しければお名前を伺ってもいいですか?」
「…僕は、有栖院御園、同じく高校一年だ」
「!なんだ、同じ学年なのね。じゃあ、堅苦しい言葉は辞める!よろしくね、有栖院くん」
「………」
ニコッと微笑みながらそう言った蒼。
蒼の笑顔で、顔が熱くなるのを感じた御園は再びそっぽを向いた。
「……御園で、いい…」
「!……」
目を合わせれば顔を背けられてしまう。
だが言った言葉に不快の空気は感じられない。
…きっと、上手い言葉が見付からないだけで、仲良くしたいのだろう。
そう感じた蒼は手を伸ばした。
「!」
「私も、蒼って呼んでほしいな。改めて、よろしくね?御園くん」
「―――――っ…」
何も言わず、少し頬を赤らめながら手をスッと出した御園。
その手をぎゅっと掴み握手をする。
だが赤らめた頬は落ち着こうとせず、どうしても熱くなってしまう。
見られるのを嫌がり、御園は直ぐ様顔を背けた。
新しく友達ができた時のように、どこか嬉しく思う蒼は「でも驚いたよ〜」と話し始めた。
「何がだ?」
「だって、真昼くんにこんな綺麗な顔の人が知り合いにいたなんて…」
「っ!き、貴様はそんな恥ずかしい台詞を堂々と…!」
「?…恥ずかしい、かな?そんなにダメかな…?」
「当然だろう!!普通そんな事を平然と言わないぞっ。寧ろ、蒼の方が、綺麗な…顔、を……」
「?なぁに?」
「っ!!な、何でもない!!」
「?」
御園は教室の前に立ち止まり、しかめっ面で様子をうかがっていた。
「入らないの?呼んでこようか?」問いかける蒼を横目で見ながら、「言っておくが、城田真昼とは知り合いでも何でもない」と返す。
「え?そうなの?」と返し、教室を覗くと、二人の可愛らしい子供がいる事に気付いた。
一人はショート、もう一人はロングの髪、双子だという事は一目瞭然。
「…??だ、だれ…?」
「「城田真昼?“オールオブラブ”が、あなたを呼んでる」」
「えっ子供?」
「誰かの妹?」
「?!いや…えっ?」
「どこから入ったんだろ…」
周りがざわつく中、二人の子供はある存在に気付く。
ぴゃっと二人同時に机に飛び込んだ。
「「スリーピーアッシュ!」」
「に゛ゃっ?!」
びくうっとその机から跳ね上がるクロ。
ガタタッと机は傾き、近くに居た桜哉が巻き込まれ下敷きになってしまった。
「わぁ〜〜〜っ」「あ――っ桜哉が下敷きに!」ガラガラガラと更になだれに巻き込まれ、周りは更に慌て騒ぎ始める。
そんな様子を蒼も、はわわ〜と心配していた。
「やかましい。これだから庶民の学校など来たくなかったんだ」
御園の言葉に、真昼と周りの視線は一気に御園へと向けられた。
そこには、全く見覚えのない立派な椅子がある。
(え、い、椅子…?一体、どこから…?)横にいた蒼は茫然とその椅子を見ていた。
「城田真昼、僕と一緒に来てもらう。イエス以外の返答は却下だ」
一斉にし――――――ん…と静まり返る。
その沈黙は真昼の言葉で敗れた。
「だっ…誰だよお前らは!?いきなり何…っ。つーかその変なイスなんだよ!?どこから出した!?」
「ま、真昼くんっダメよ、そんな一気にツッコミいれると、処理し切れないよっ」
「いやいやそういう問題じゃなくてっ…てゆーか蒼!?何でそいつと一緒にいるんだ!?」
「え―――――…成り行き?」
「成り行きでそうなるか!!?」
・・・・
「これだからネコだけでいいと言ったのに…捕獲」
「ちょ、待って!?何で真昼くんとクロを…!?」
「着いてからにしろ」
「ちょ…話聞け―――――!!あああああ」
さっさと去って行こうとする御園についていく蒼。
クロは真昼の頭に乗っかり、二人の子供にガシッとはがいじめにされながらずるずると引っ張られていった。
クラスメイトの者たちはポカ―――ンとするしかなく、教室に取り残された。
「何?!何?!」がたがた
「…真昼が拉致られちゃった…」
「蒼もついていっちまったな…」
「キレーな顔の子だねー。あの制服ってたしか…え――と…帝一瀬学園。お金持ちばっかりの進学校…」