Word

□信じてたもの
1ページ/8ページ




   #05.信じてたもの








――――――――――……





「……ん………っ……?」


目が震え、ゆっくりと目を開いた蒼。
ベッドで眠っていた蒼の顔の上には、ユリーとマリー、双子が心配そうに見守っていた。
目を覚ましたことに、「「蒼っ!」」と叫ぶ。





「……ここ、は…?」


「別室ですよ」

双子の叫びにリリイも気付き、直ぐ様蒼に近付いて、心配しながらも蒼の質問に答えた。
「私は…一体?」「血を流し過ぎて、倒れてしまったんですよ」何があったか覚えていない蒼。
リリイの説明に、ああそうか…と傷のことを思い出した。
頭に触れると、包帯が巻かれていた。
ゆっくりと起き上がろうとすると、傷に痛みが走り、思わず手で抑える。
「あ、まだ横になってた方が良いですよ」焦るリリイだが、蒼は「大丈夫です」どこかぎこちない笑顔でにこりと、そう返した。




「すみません、ご迷惑をお掛けしてしまって…」


「っ…とんでもない。こちらこそ、ユリーとマリーを助けて頂いて、ありがとうございました」

「いえ…」







「「…あ、あの……蒼?」」


おずっ…と蒼に話し掛ける双子。
目線を向けた蒼は安心させるようにふっと優しく微笑んだ。
そんな蒼の微笑みに、リリイも思わずドキリと心動かされた。




「なあに?」




「「…ご、ごめんなさい!」」


「え?」


「ユリーのせいで…」

「マリーのせいで…」



「…」


「「本当にごめんなさいっ」」




「……ユリー…マリー」リリイも心配そうに見守る。
双子の言葉を聞いて、またも蒼は優しくふっと笑みを零した。
そして一言…。






「大丈夫よ?」




「「…?」」




「ユリーちゃんと、マリーちゃんて言うのね。素敵な名前だね」

「「…?」」


「二人が怪我をしてしまったら、御園くんもリリイさんも悲しむもの。怪我がなくて、本当に良かった…」

「「…蒼」」


にっこり微笑んでそう伝えると、双子の涙を優しくすくってあげる。
そしてそのまま手をそれぞれ片方ずつの頬に手を添える蒼。
その行動に双子は目を見開いた。




「泣かないで?大丈夫よ」

「「……っ」」


ユリーとマリーは、蒼の優しい笑顔と言葉に心許したように、母親にすがるように…蒼に抱きついた。
目を閉じ、ふわりと優しく二人の頭を撫でた。
蒼の暖かい雰囲気にリリイも引きこまれていく。







(…蒼さん……貴女は、不思議な方ですね…)





その優しさに魅入られて

ユリーもマリーも 蒼さんに懐いている…


まるで 『ただいま』と帰ってくると

『おかえり』と 迎えてくれる 母親のようで…




何でしょうね 今も あの笑顔を見ていると


胸が とても熱い…






ふんわり笑う蒼の両側にそれぞれくっつく双子は、ぎゅっと蒼の服を掴み身体をすり寄せる。
そんな光景に、リリイは「よほど気に入られたみたいですね、蒼さん」とにこにこしながら言った。
どこかくすぐったい気持ちを抱きながら「え、えへへ…」と照れ笑いをする蒼。






「それにしても…不思議ですね」

「何がですか?」

「蒼さんの……」

「私の…?」









「……オーラ…とでもいいましょうか。とても不思議な気分です」



「え?」


急に蒼へ近付くリリイ。
スッと蒼の髪を持ち、口づけをする…そんな行動に蒼は顔からボンッと煙が出ると同時に顔を真っ赤にした。
男性の身体を見ても感動していた蒼だったが、さすがにこのような大胆な行動にはついていけてないらしい。





「あ、あの…リ、リリイさっ…!わ、そっ…あ、あの……あぅ…」


「すみません、つい。綺麗な髪ですねえ」

「い、いえ…そったら……こと…」


「「蒼、顔が真っ赤〜」」


「っ!!ゆ、ユリーちゃん!マリーちゃん!〜〜っ!」


「ふふっ…(可愛らしいですねえ)」



リリイの行動に、蒼の鼓動はドキドキしている。
リリイは、「気分はいかがですか?」と尋ねた。
「へ?あ、はい。もう大丈夫です」ベッドから抜け出し、ゆっくりと立ち上がる蒼。
すかさずスッ…と手を差し出すリリイに、「あ、ありがとうございます…」と緊張した様子で手を置く。




「御園たちの所へいきましょうか。とても心配していましたよ」

「あ、はい…」


ユリーとマリーには眠る時間の為部屋に戻るよう話し、その場所で別れた。
二人で手を精一杯高く上げて、おやすみなさいと手を振っている。
「おやすみなさーい」蒼も手を振り返してその場を後にした。

別室で待つ御園たちの元へ、二人は手を繋いだまま歩いていた。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ