Word

□信じてたもの
2ページ/8ページ






「あの、リリイさん」

「はい?」


「この間は、ありがとうございました」

「いえいえ、私の方こそ、クッキー御馳走様でした。美味しかったですよ」

「あ、あれは真昼くんが…」

「え、そうだったのですか?蒼さんは、料理はしないんですか?」

「いいえ、しますよ?料理も、お菓子作りも。あ、そうだ!手当てのお礼に、何かしたいのですが…」

「では、今度蒼さんの手料理を御馳走になりましょう」

「え?そんなのでいいんですか?」


「食べてみたいです、蒼さんの手料理。…きっと、御園も喜んで食べてくれるでしょうから」

「じゃあ、今度遊びに来て下さい。一緒にご飯食べましょう!」

「ええ♪」


蒼の満面の笑みに、リリイはどこか気持ちがふわふわしている、そんな感じを覚えた。
優しい笑顔に惹かれていく…ずっと見ていたいと思う…。
ほんの少し…ほんの少しだけ……繋いでいた手を、きゅっと強く力を込めた。


そんなこんなで別室に着いた二人。
扉を開けると、第一声に真昼の声が蒼の名を呼び、真っ先に蒼に近付き肩を掴んだ。







がしっ

「蒼っ!!怪我大丈夫か!?」


「あ、う、うん…だ、大丈夫よ…?」

「そっか…」ホッ…


「あ、あの…ごめんなさい。心配、かけて…」

「ほんとだよ!全く蒼はいつもいつも…!」

「あぅ…ごめんなさい」


まるで母親に叱られている子供のようだ。
そんな二人の元に御園もクロも近付いた。
クロは蒼を見て相変わらずムスッとしている。





「蒼…大丈夫か?」

「うん。大丈夫よ御園くん。ありがとうね」

「ッ…フ、フンッ。こんな事になったからな、治ってもらわないと困るからなっ」

「そうね、治らないと血だらけでいっぱいになってしまうものね」


にこっと笑いながらそう言う蒼に、御園は紅潮する頬を隠すように顔を逸らした。
?を飾す蒼に、クロは「…蒼」と名前を呼んだ。
クロの方に顔を向ける蒼、「なぁに?」と答えようとする蒼の髪を容赦なくぐしゃぐしゃっと掻き回した。






「ちょ、ちょっとクロ〜!なんなの〜〜っ!」

「〜〜っ…」

「う〜〜〜〜ク、クロ〜〜〜〜…!」

「……」


隣で真昼も「何してんだよクロ!」と怒鳴っている。
パッと手を離し、蒼は「う〜…」と唸りながらぐしゃぐしゃになった髪を少しずつ解かした。
「おい、蒼…」呼ぶクロの顔を見上げる蒼。
見上げた蒼にでこぴんを喰らわせた。
顔はまだムスッとしたままだ。




「うう〜〜痛い…」

「前にも言ったろ、無茶すんなって…」

「へ?無茶?なに?」

「……あの双子庇って、怪我しただろ。そんなんじゃ、命がいくつあっても足りねーよ」

「でも庇わないと…柱の下敷きになっちゃってたし」

「蒼もおんなじだろ」

「そう、だけど…」

「……ったく…」


呆れ顔で蒼から離れ、イスに座るクロ。
続いて真昼や御園、リリイもイスに座った。
最後に蒼がクロの隣に座ろうとした時にこそっと言う。






「あの、ありがと…ごめんね?心配掛けて…」


「……別に」

だらっとしながら、クロはリリイと何百年振りか分からない久々のチェスを始める。
蒼は隣でじーっと眺めていた。














――――――――――……




ばんっ

「なんでそう無駄に偉そうなんだよっ」





「黒猫だから[クロ]…なんてネーミングセンス。知性のカケラもない…僕なら却下だ」


「あ?」



う…うっせーなシンプルだろ!!お前の[スノウリリイ]こそどうなんだよ!?」

「はい?」


「カッコつけすぎじゃねーか!?逆に変だろっ」

「な…!?」



「まあ、お前ら落ち着け…。ちょっとオレに癒されろ。おらよ」にゃ〜〜〜〜〜ん


「はぐぁっ!!」ズキュ―――ンッ!!


癒されるか!!逆にムカつくわ!!つか蒼!なんだよその発声!なんだよズキューンって!!」

「え?だってかわいぃから」

「なんか古ぃよ!!デフォルメが古い感じする!!」

「失敬な」



なんてやりとりを行っていたが、本題に入るとしよう。
せっかく黒猫姿になって癒そうと思ったクロを、殴る真昼。
「お前…こんないやし系猫を殴るなんて…」眉間にシワを寄せて頭を抱えるクロ。
そんなクロの頭を「よしよし、痛かったね〜」となでなでする蒼もいた。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ