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□よみがえる幻影
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「……知ったら、蒼は僕の所に戻ってきてくれる?」





「え……?」


それは思いもよらない言葉だった。
椿が何を言っているか分からない…。
何の意味を持ってして言っているのかが、蒼には理解できなかった。







「知らない方がいいかもしれない。蒼の為に…」


「私の…た、め…?」


「そう、蒼の為」



「なら何で、椿さんは私を見る時…すごく優しそうに、でも哀しそうに見るのですか?」

「……」

「…私、誰かが泣いてたり、悲しそうにしているところ、見たくない。…私に……私に、出来る事はありますか?」

「!」


蒼の言葉に、椿は一瞬の出来事を思い出し、思わず目を見開いた。
だがそれを悟られないよう、すぐに戻した。
…そして優しく笑って、蒼と同じ目線までしゃがんだ。











「じゃあ、お寿司一緒に食べようよ」




「…へ?……お、お寿司…?」

「うん。僕の家族も呼んだんだ」

「か、家族…?」



すると開いたままの部屋から賑やかな声が入ってきた。
ふいっと椿が後ろを見ると、蒼も知る一人の人物が…。
そのせいで後ろにいる者たちの姿は見えなくなってしまったのだが…。



















「やァ〜〜蒼〜〜〜!元気ィ〜?!」




「ベルキアさんっ!」


「やっほォ〜蒼〜〜久しぶりィ〜〜☆」

「お、お久しぶり…です…」


ぎゅうっと蒼を抱きしめるベルキア。
されるがままの蒼はポカンとしたままだ。
「ほらベル、早く蒼から離れてよ。病人なんだから」と椿から突っ込まれ、「お〜っと、そうだねェ☆」と、ベルキアはパッと蒼から離れた。




「もォ〜〜蒼ってば外で倒れててさァ、ボクもつばきゅんもびっくりしたよォ!」


「え…じゃあ、見付けてくれたのって…椿さんとベルキアさん?」

「ああ、違うよ。多分通りすがりの誰かが見付けたんだと思う」

「近くで救急車が来てたからねェ。そしたらつばきゅんが…」

「蒼の気配がしてね。そしたら蒼が運ばれるところだったから、知り合いですって言って乗せてもらったんだ」

「そう、だった…んですか……ありがとうございます」

「いいえ、どう致しまして」




すると「若、頼んでいたお寿司、お届けに参りましたよ」眼帯の背が高い男性と。
「……」無表情のナイスバディな女性が立っていた。
見知らぬ二人がやってきて茫然とする蒼に、椿は蒼の肩に手を置いた。
気付いた蒼は、椿の方を見上げた。
目が合った椿は優しく微笑み、「さ、食べよう」と蒼の肩を押して、ベッドまで座らせてくれた。
右側に椿が座り、「ボク蒼のとっなりィ〜〜☆」テンション高くポスンッと左側にベルキアが座る。
テーブルに、先ほどの男性がテキパキとお皿と割り箸、しょうゆなどを用意してくれている。
目の前の手際の良さに感動…あーいやいや、何故目の前でお寿司を用意してくれているのか疑問に思った。





「あ、あの……これは、いったい…」


「ほんとはみんなで食べるつもりだったんだけどね。蒼を見付けたから、急遽こっちに持ってきてもらうことにしたんだよ」

「え?…わざわざ…?」



「当たり前じゃないか。蒼とお寿司食べるの、とても楽しみだったんだから」

「ボクもボクもォ!」



「……」

二人に挟まれ、椿とベルキアの言葉はどこかくすぐったい気持ちに駆られた。
眼帯の男性が、蒼の紙皿に寿司を用意してくれたのを、今の現状がおっつかない蒼はただ茫然と見ている。





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