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□うそつきはだれだ
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ピンポ―――――――ン…






「…蒼…もう学校行ったのかな」

「電話出なかったんだろ?もう登校してて、気付いてねーだけなんじゃねーのか?」

「ん〜…けど、先に行く時は必ずメールくれるから…」


合い鍵を取り出し、玄関のカギを開ける真昼。
カチャッ…と遠慮がちに扉を開け、小さい声で「お邪魔しまーす…」と中の様子を確かめてみる。
明かりは点いていた。





「蒼ー?」

「お前…不法侵入だぞ?犯罪なんかと向き合えねーよ…」

「蒼から合い鍵預かってんだよ!なんかあった時助け合えるように。だから不法侵入なんかじゃねえ!」

「…はあ――――……」







ガチャ…


するとリビングのドアが開き、蒼はのっそりと顔を出した。
「あ、真昼くん…おはよ〜…」力のないうっすらしたような挨拶。
蒼の様子が違うとすぐに察知しながらも「お、おはよ…」と挨拶を返した。
そのままリビングのドアを閉め、玄関まで向かって来た。





「クロも、おはよ〜…」

「……おー…」


「蒼、どうした?なんか様子変だぞ?」

「え?だ、大丈夫よ〜。さ、早く学校行こう」

「…あ、ああ」


様子が違う、それでも蒼はローファーに履き替え、部屋を出て行った。
真昼もそれについていく。
登校中でも、蒼はふらふらしながら学校へ向かっている。
隣で真昼もクロも心配そうに見つめていた。






「…蒼、お前風邪引いてんだろ?」


「へ〜〜…?そ、そんなことないよ〜」

「……」


額に手を当ててみると、熱が真昼に伝わっていく。
ようやくその病名が判明した。






「熱あるじゃねーか!帰って休まないとダメだろ!?」


「だ…大丈夫、大丈夫よ〜〜…それに、もうすぐ文化祭だし、今休んだら迷惑かかるもん」

「けど…」

「それに…」

「?」


休む事に渋る蒼。
「無理して行ったら、悪化するだろ?」蒼の身体を心配して、真昼は説得する。
それでも蒼には、学校に行きたい理由があるのだ。
文化祭で歌う曲の練習や、夢に視た事も含めて…。





「…真昼くん、桜哉くんに…電話した?」

「…え?あ…桜哉か、昨日電話したんだけど出なかったんだよなー」

「…そう」

「今日の放課後、桜哉ん家行ってみるよ」

「私も行きたい!」

「ダメだって!それでまた更に悪化したらどうすんだよ!帰ったら休めって!」

「う〜〜…せめて、電話ちょうだいって伝えて?お願い…!」


蒼の火照った顔と、うるうるした上目遣いに真昼も顔を真っ赤にさせる。
真昼の場合は、熱とかそんなものが原因ではないが…。
そんな蒼の必死さと訴えに、真昼は心折られて「〜〜っ……わ、分かった」と一言。
ほっとする蒼はにっこり笑って「ありがとう〜…」と返した。




「ほ、ほら!学校行くぞ!?」

「うん…」


足早でずんずんと行く真昼に、蒼は必死についていく。





そして学校に到着。
おはようと挨拶を交わしていくが、気付く者は気付く。
蒼が風邪を引きながらも来たこと…それでも蒼は大丈夫と言い続けた。
チャイムまで、結局桜哉は登校しなかった。

一時間目が終わる時、真昼は蒼に近付いた。





「大丈夫か?蒼」

「…うん、大丈夫…」

「……」


「心配しないで、ね?ほらっ…」カタンッ


席を立とうとしたところ、ふらぁっ…と真昼の方へ倒れ込む蒼。







「っ!?蒼!!」


目の前にいた真昼が、蒼の身体を支えた。
ポスッと真昼の腕に収まる蒼は、ぴくりとも身体を動かすことができずにいた。
「蒼っ!?」「蒼ちゃん!?」「どうしたの!?」わあっと集まり蒼を心配してくるクラスメイト達。




「蒼、熱あるね…」

「ったく、何で学校来んだよ…」


虎雪と龍征も心配してくれる。
「俺、蒼を保健室に連れてくよ」蒼を抱きかかえ、龍征たちにそう伝える。
「先生に言っておくよ」と虎雪が返し、クラスメイト達も心配そうに保健室に向かう背中を見送った。

























ピピピッ

「……38度…か」



「ったく、だから休めって言ったのに」

「あはは…ごめん」


「はあ〜…」と溜息をつく真昼。
授業が終わるまでここで休めと強制される蒼は、こんな状態では何とも言えず…。




「真昼くん…次の授業行って…?少し休んだら、帰るから…」

「そんな身体で、また倒れたらどーすんだ?俺も一緒に帰るから」

「ううん…文化祭、真昼くんいないと…ダメだもの……ね?」



無理に笑顔でそう取り繕う蒼。
ツキン…と胸を痛めながら…「二時間目終わったら、鞄持ってくるから…それまで寝てるんだぞ?」蒼の額に手を置く。
「…冷たくて、気持ちいい…」少しひんやりする真昼の手が、ほんの少しだけ、蒼の熱を和らげた。
心配しながらも、真昼は静かに立ち去り、保健室を後にした。












頭が…ぼうっとする…


身体も熱い…視界がぼやける…





嗚呼…また、あの夢を…視るのかな……








まぶたは重く、ゆっくりと目を閉じると、視界は暗闇へと変わっていった。





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