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□武器を持つということ
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   #09.武器を持つということ





「桜哉…っ」ぐ…と立ち上がる真昼。
蒼の首にナイフは宛がわれ血を流したまま。
どこか落ち着いた表情で動かない蒼。
それを見た真昼は今にも動こうとするが、隣でクロが止めた。




「待て真昼。やめとけ、今のお前じゃ戦えねーよ…」


「クロ…っ!?」

クロの姿を見た真昼は、とっさに先程の出来事を思い出し、「お前…ケガは!?」と必死に問う。




「もう治っ…あ――――いや、だめだ…ここは逃げるしか…」

わざとらしくふるる…と身体を震わせるクロ。
そんなクロの冗談に付きあっていられず「クロは下がってろ!!俺が…」と飛びだそうとするが、クロはまたも制止した。





ぐい

「逃げるんだよ」


「逃げねえよ!!御園がやられたんだぞ…!?それに蒼だって危ねえ…!!」

「こんな力の使い方でいいのか…何もしてない、今ならまだ…何もお前のせいじゃ…」




バシ

「何もしないでどうするんだよ!!」


クロの手を振り払う真昼。
クロは何かを感じ取り、危険を冒さない為に制止した…それでも真昼は進もうとする。
そして呟いた…。



「…だめだ真昼。…だって」










     ―――――お前 迷ってるじゃねーか…―――――





真昼はリストバンドを外し、それを桜哉に投げ付ける。
思わず蒼の首からナイフを離し、投げ付けられたリストバンドをキャッチした。
蒼も真昼の方を向いて、必死になっているのが目に見えて分かる。







「真昼、くん…」


「…そう。それでいいんだよ、真昼。嘘つきは、殺さないと」
































一方で…。

ビルの上からベルキアを操っていたのはオトギリ。
両手両足に糸をくくり、更には口までもを使って操る、椿の下位吸血鬼(サブクラス)。

すると、雨がサアアアと降り始めた。




「…ん、月が出ているのに雨…今日はいらっしゃらない予定でしたのに…困ります…」

コンと下駄を鳴らし、横を見るオトギリの目に映ったのは、椿。






「あは。いいじゃない、僕もまぜてよ、オトギリ。…あれ?蒼だ。体調大丈夫かな」

蒼がいた事で、気分が少し上がる椿。
そしてその目は真昼に変わり、何かを探し求めるハンターのような目つきになった。





「…さあ、城田真昼。君の“絶望”の形を見せてよ。君は“鍵”になり得るかな?」


武器(リード)を手にし、桜哉に向かってくる真昼。
クロは武器(リード)を手にした真昼に訴えるように、言葉を思いで綴る。








     ―――――どうか どうか…飲まれるな―――――






ドンッ



「わっ!」

真昼が向かってくる前に蒼を横へ突き飛ばした桜哉。
尻もちをつく蒼は、桜哉の頭部が殴られ、吹っ飛ばされたのを目にして思わず叫んだ。





「桜哉くん!!……真昼くん?」


まるで、真昼の意思ではないような気がしてならない。
蒼は真昼自身倒す為にがやっているとは到底思えなかった。
…武器(リード)に何かある、そんな気持ちで…。











     ―――――…振り回すな―――――






(な…殴った…。俺が…降り回してる気がしない。俺のほうが力に振り回されてるような感じだ…)


息が荒い…戸惑う気持ちが、真昼の後ろからざわ…と何かが騒ぎ立てる。
その戸惑いが、クロの中の何かがくすくすくすと笑い、クロ自身の鼓動がドク…ンと音を立てた。

桜哉は身体を起こし、立ちつくす真昼を目に映しながら…話しかけるように思いを言葉にしていく。









―――――真昼。







「ごほっ」


「桜哉くっ…!頭、血…ケガして…っ」






それに、蒼。


オレには、実は、秘密の計画があってさ。


それは、

これ以上歳を取らないオレが、

真昼達と楽しく、精一杯高校三年間を過ごした後、

・・・・・・・
いかに自然に姿を消すかっていう…





訪れなかった

幸せな未来の話なんだけどさ






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