Word

□武器を持つということ
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     ―――――…見失うな―――――








「……血が止まんねぇ…その武器(ホウキ)のせい?それが主人(イヴ)が持つ武器(リード)ってやつか…」

手の平でごしっと血を拭う桜哉、しかし血は止まらない。







「それなら…ちゃんとオレを殺せる?」






     ―――――だめだ そっちへ行くな―――――




「殺―――…」






「桜哉くっ…なに、言って……」



血が止まらないのに笑みを浮かべる桜哉。
殺すという事に動揺を露わにする真昼。
そんな二人を見守るしかない蒼は桜哉に突き飛ばされて、その場で座り込んだまま。




(ちょっと待て…殺すって何だ?殴った…だけだろ…っ。俺に誰かを殺すなんてできるわけ……)


迷いが、手にしている武器(リード)の形を歪ませる。
真昼の動揺している表情が、何を考えているか察知したように、桜哉は求めるように叫んだ。





できるよ真昼!!さあ!さあ!さあ!!今のお前には人を殺す以上の力があるんだから、さあ!!








     ―――――だめだ真昼…“人”と呼べなくなるぞ―――――




クロの思いが真昼を警告している。
一方で真昼は、武器を持った事に迷い、そして否定した。
目をぎゅっと閉じ、武器を強く握りしめる真昼の表情はまるで拒絶を示しているかのよう…。






俺は誰も殺したくない

武器(これ)を使うと桜哉は死ぬ…?

今まで一緒に笑って過ごしてきたのに


俺が欲しかったのはこんな力じゃないだろっ…





…そして。





















――――――――――……



ここは、クロの中の世界…。




とぷっ



<わあ、わあ、溺れちゃう溺れちゃう>

<どうしよう、クロ。真昼の精神がいっぱい流れ込んできてるよ>


<『恐怖』 『後悔』 『動揺』 『拒絶』>

<キミが真昼に会わなかったら、真昼はこんなどろどろにならなかったのに>




<キミが動くと 世界はいつも不幸だね>


精神と呼ばれる黒い沼。
流れ込む思い。
クロはその沼に堕ちていく…。








とぷん



     ―――――めんどくせえなあ…―――――
































ドクン




現実の世界で、クロは内側から何かに支配されたように鼓動を大きく揺らがした。
目を見開くクロ。



ガッ

爪が真昼のまぶたを抉るように抑えつけ、鋭い歯が真昼の首元を襲った。





「あっ…!?クロ…っ!?」


真昼の血を飲んだクロは、意識を捕らわれたような目をした。
空を仰ぎ、口元から滴る血、目を見開くクロ。
「なんだよ…何…っ。あ…っ?」噛まれた首元を抑え、急な事に後ずさりする真昼。





「……クロ…!ダメよ…っ……クロ…!!」


クロの背後から現れる黒い化け物。
巨大化していくその化け物を目に映す蒼は、ナイフで切った首筋に手を当てながら顔を青ざめ、身体を震えさせる。
その巨大な黒い化け物の目から垂れる雫。
「……ク、クロ…」その雫はまるで涙のようで、影響されるように蒼も涙を流した。
そんな蒼を、クロはチラリと見やる。
真昼も、いつもと違うクロの様子に困惑し呆然としていた。







「クロ…?」




それを見ていた椿は目を見開く。








「これは……まさか?想定外は困ります…どうします、椿さ…」

オトギリが隣にいた椿に呼びかけるが、椿は颯爽と姿を消していた。
「気まぐれな男(ひと)…困ります…」その呟きは、オトギリにしか聞こえずに…。










「クロ!!?どうしたんだよ!!何だこれ…勝手に何して…っ」




「ま、真昼く…っ!!」ゴボッ


「蒼!!」

化け物の流す涙がどんどんと落ちていき、沼のように溜まっていく。
その沼に、蒼は引きずり込まれていった。




「クロ!なんだよこの…沼…!?沈―――…!」ずっ


言いかけて真昼も引きずり込まれようとしている。
顎元までに沼に沈められ、今にも溺れそうな勢いを必死に抵抗した。





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