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□悔しさから生まれる思い
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――――――――――……




一方、蒼は商店街に買い出し途中、果物を買ってある場所に寄っていた。
そこは、御園が入院している病院。
[お見舞いに行ってもいいかな?]そう送った蒼のメール。
返信は、ところどころ打ち間違えはあったが、来ても構わないと。
その後にもう一通、リリイから送られてきたと思われる文章と、地図の画像が添付されていた。
場所もそんなに遠くないから、少しだけ寄ろうと思ったのだ。
病室の場所を聞き、蒼は御園がいる病室へと足を運ぶ。






(……御園くん…リリイさんも……具合どうかな…)


近付く度に足が重くなる感じがした。
それでも、蒼は会いに行きたいと思いながら前へ前へと進む。
起こってしまったことは後に修正は出来ないが、今出来ることはある。
だから会いに行かなければ…会って言わなければならないことがあるのだ。
一つの勇気を胸に、蒼は御園の病室の前に辿り着いた。

おず…と拳をドアの前に持っていく。
…そして遠慮がちに、コン、コン…とノックした。





ガラッ

「!……蒼、さん…?」




「っ…リリイ、さん。あの、こんにちは…」

「はい、こんにちは……び…っくり、しました…」

「え?」

「いえ…まさか、地図を送ってすぐ来るとは思わなかったので」

「あっ、す、すみません…ご迷惑、でしたか?」

「まさか、とんでもない。ありがとうございます」

「…リリイさん。足は、その…もう平気なんですか?」

「ええ。この通り、足はくっつけましたから」

「そ、そうですか…」


「?…蒼さん?」







「……あ、あの、御園くんは…?」

「起きてますよ」


どうぞと手招きし、蒼はゆっくりと中へ入っていく。
すっと顔を覗かせてみると、御園はベッドの上で本を読んでいた。
「御園くん」そう蒼が呼ぶと、「ん?」と気付いて声のした方を見る御園。














「っ!!??っ蒼?!な、何故ここに…っ!!」


蒼が来た事で急に慌てふためき、驚きを隠せずにいた。
あわあわと焦る御園は、膝の上に今先程まで読んでいた本を床にゴッと落とした。
すかさず蒼は本を拾い、御園に手渡した。





スッ…

「はい」



「あ、ああ…すまない」


受け取る御園は、先程の出来事と、あの日の夜の出来事から蒼を直視出来ずにいた。
受け取った本に目を向けたまま、御園は蒼に問いかける。






「そ、その……蒼は、もう…いいのか?」

「え?」




「リリイに聞いた。僕がやられた後、蒼もあの場に来たと…」

「私は…大丈夫」

「……そうか…なら、良かった…」


「……」




大丈夫、大丈夫…自分に言い聞かせるように答えた蒼の表情は、未だ曇っている。
そんな蒼を心配そうに見つめるリリイ。
立ち尽くす蒼に、見兼ねた御園は「立ってないで、座ればいいだろう」と椅子に目を向けた。
「は、はい…」何故か畏まり、遠慮がちに近くにあった椅子に座る蒼。
持ってきた果物をきゅっと抱え、蒼はおずおずと「あ、あのね…?」と言葉を発する。
御園も蒼の様子がおかしいと気付き、蒼の方へ顔を向けた。
今にも泣きそうな表情と、眉間にシワを寄せて、蒼はようやく話し始めた。















「御園くん、それにリリイさん。ごめんなさい!




「「!?」」


急に頭を下げ、目の前にいる二人に謝る蒼。
いきなり謝罪をされ、二人も訳が分からない様子。
「な、なんだ蒼。どうしたんだ急に…」「そうですよ蒼さん。何故、謝るのですか?」御園もリリイも、続けて蒼に問うた。
頭を上げた蒼の表情は未だ曇ったまま…。





「起こってしまった事は、もう変えられない……分かってるけど…」

「…?」
















「もし…もし私が……もっと早くあの場所に行っていたら…止められたかもしれない…っ」


「!」

「蒼さん…」





「こんな怪我、負わなくて良かったかもしれない…っ」

「蒼…」





「自分が情けない…っ。結局御園くんとリリイさんに怪我を負わせて、真昼くんもクロも苦しんで…っ」



私には何の力も無いっ…何も出来なかった…っ!!本当にごめんなさい!!
出来る事なら私もやりたいって、何かあったらすぐ駆け付けるからって…あの時そう言ったのに…下に俯き、懺悔の様にそう伝えた。
目をぎゅっと閉じ、後悔の拳が強く握りしめる。
そんな蒼を見つめる御園も、自分の負ってしまった怪我と悔しさに唇を噛みしめた。
…蒼に、こんな事を言わせてしまった…悔しい…!!
気持ちが渦巻く御園も、拳を強く握りしめた。





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