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□悔しさから生まれる思い
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「蒼が、謝る事じゃないだろう」




「!」


「蒼が悪いことなんてない。僕が弱かったせいでもあるんだ…!僕がもっと強ければ…!!」

「御園…」


「御園、くん…」




「寧ろ、蒼に謝らせてしまったことに申し訳がない。だから…もう謝るな」





「……うん…」


涙を浮かべながら、御園の言葉を聞いて笑みを零す蒼。
そんな蒼に、リリイはハンカチを差し出した。
「ご自分を責めないで下さい」と、困ったように、でも優しく微笑みながら…。
受け取ったハンカチで涙を拭きながら「ありがとうございます…」とお礼を言った。




「蒼さん」

「はい」







「何の力も無いなんて、言わないで下さい」

「そ、そうだぞ。現に、僕の家でユリーとマリーをかばってくれたじゃないか」

「で、でもあれは、最後に真昼くんとクロが…」

「真っ先に動いたのは蒼だ」

「…っ……で、でも私は…」






「蒼さん、蒼さん」


「え?」



















「ここ、ぎゅーってなってますよ?」


困り顔でも笑顔を絶やさずに、リリイは自分の眉間に指差した。
「っ!」気付いた蒼は、こしこしと自分の眉間をこする。
リリイが初めて蒼と会った時に言ったことと、同じ行動…ふっとリリイはその時の事を思い出した。






「……すみません。ダメですね…私、ここに来て二人を困らせてるだけで」


「そんなことありませんよ」

「そ、そうだ。別に、困るとは言って…ないぞっ…」


「リリイさん…御園くん…」








「御園…顔、赤いですよ?熱では、なさそうですが…」にこにこ



「うっ!うるさい!黙れ!」

「おやおや…」にこにこ


そんな二人のやり取りを見て、蒼は思わずくすっと笑う。
くすくす…くすくす…「お見舞い、来てよかった…」涙を拭き終わり、蒼は改めてふわりと笑顔を露わにした。
優しく包み込まれそうなその笑顔に、御園は更に頬を紅潮してしまう。











「それはそうと蒼、その首の包帯はどうした?」

「へ?あ、これは…」


「まさか!!桜哉(アイツ)にやられたのか!?」

「あっ、ち、違うの!これは私が勝手に…!」

「……勝手に?」


「本当に、私が勝手に傷作っちゃっただけだから…心配しないで?ただの切り傷だから」






「……蒼。もう無茶はするな」


「………ありがとう…御園くん」


ふんわり笑みを零しながら、蒼はそう言った。
…決して「うん」とは言わずに……。
話を逸らすように、蒼は買ってきた果物をずいっと御園に差し出した。





「ほら、果物!買って来たの、お見舞いに」

「美味しそうですねえ」

「どれがいい?何が好きか嫌いか分からなかったから、色々買ったよ?」


「えっとねー…リンゴにオレンジ、バナナに桃、グレープフルーツとイチゴとブドウと…」がさがさと漁る。
「どれだけ買ったんだ!!」と突っ込みたくなる。
無論御園はそう突っ込んだ。
中を見て、「沢山買いましたねえ」とリリイも続けて言う。





「だって、好きなものは知らないし、嫌いなものばかりだったら申し訳ないし…」

「だからって、こんなに沢山買う必要もないだろう」

「あ!なら、子供たちにあげたらいいんじゃないかな?」



「「子供たち…?」」


「そう。リリイさんの下位吸血鬼(サブクラス)の…」

「成程、それはいい案ですね」

「でしょう?はい、御園くん」



果物の入った袋を再度御園に差し出す蒼。
「怪我が治ったら、今度は私の部屋に遊びに来てね?」にっこり微笑んでそう言う蒼に、果物を受け取った御園はパッと顔を赤くしながら…。





「し、仕方ないな!そこまで言うなら、行ってやらんでもないがなっ」ツンッ

「ふふ」


恒例(?)のツンデレ発生。
そんな御園をにこにこと見守るリリイ。
「なっ、何を笑っているリリイ!」と怒っているが、ひらひらしながら「いえいえ〜何でもないですよ♪」と交わしている。
二人の様子を見て、蒼はどことなく安堵した。

少しして蒼は、買い出し途中で寄った為、学校に戻ることにした。
病院の外までリリイが送ってくれるとのことで、蒼とリリイは二人きりになる。
蒼は、少し気にかかっていたことをリリイに問いかけてみた。





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