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□桜哉
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一方で…。




「桜哉!!」


近くで張っていた真昼が、見つけた桜哉を追い続ける。
ぽいと黒猫姿のクロを捨て去り、真昼から逃げた。




「待てっ話を…朝からここで張ってたんだぞっ、待てっ」

「話すとか…何考えてんだよっ。オレはお前もお前の友達も蒼も殺そうとした…」



「お前は嘘つきだ!!

 俺を助けようと…手を伸ばしたじゃねーか!!御園の傷も深くなかったって…

 あっ、でも御園には謝れよっ」



「謝れるかよッ(怒)

 俺はお前らの敵なんだぞ…っ」







「敵じゃねえよ

 友達だろ!!



その言葉に桜哉の顔に迷いが生じた。
一瞬動きを止める…それでも無理に身体を動かし階段を駆け上がった。






「何が…友達だよっ。

 幼馴染みだってのはオレが植えつけた嘘の記憶だっ。

 オレと真昼が一緒にいたのは…本当はこの一年だけ。


 オレはお前に嘘をついて隣にいたんだ…っ」バンッ




身軽に柵に足で立つ桜哉。
そんな桜哉に真昼は言葉を続けた。







「それでも、一年間…楽しかった!!戻ってこいよ!!


「もう…一緒になんて無理なんだよ。オレは人じゃない…みんなとは違うんだよ…」



ふわ…と柵の向こうへ落ちていく桜哉。
「違う…」と呟く桜哉に、真昼は「それが何だ!!」と飛び込んだ。
桜哉に手を伸ばし、ガッと服を掴む。




「な…っ」

「お前が吸血鬼だろうが関係ねえっ。俺にだってお前の手を掴む武器(ちから)があるんだっ」


真っ逆さまに落ちていく。
真昼の右手からホウキが現れ、

「飛べ!!」

その大きな一言で真っ直ぐ勢い良く飛んで行った。
いきなりのことで、二人は声にもならない声で「うわああ―――――〜〜っ?!!」「ぎゃ――――〜〜?!」と飛ばされる。













ど―――んっ



「!…なんだろ」

教室付近に戻ってきた蒼だったが、姿は見当たらず…。
とりあえず駆け回って1階でうろうろしていたところを、何かの衝撃が蒼の耳に入った。
近くの窓に手を付け、木のある方を見てみると…。




「真昼くん!っ…桜哉くんっ!?」


「あ…蒼」


地面には葉っぱまみれの真昼と桜哉が倒れている。
「二人とも大丈夫!?」真昼と桜哉の近くに行こうと窓に手を掛け、飛び降りようとした。
とその時…!?




ガッ「へっ!?」


「「蒼っ!!!」」




窓に足を取られ、頭から前へと倒れこむ蒼。
もうダメ…っ、目をぎゅっと閉じた。
「危なっ…!!」真昼の一声で桜哉と一緒に手を伸ばし、落ちる蒼を二人間一髪で受け止めた。






「……ふう…」

「「はあ…」」


真昼と桜哉が受け止めてくれたお蔭で、蒼は顔に土をつけることなく済んだ。
蒼を起き上がらせ、そのまま地面に座り込む。




危ねーだろ!?ただでさえ運動苦手なのにっ!つかその格好で…」

そうだぞ!!何にもない所で転ぶぐれーなんだから!!もしこれ以上怪我したらっ!つかその格好でまたぐとか、パンツ丸見えだぞ…?」



「えへへ…だって、二人が葉っぱまみれだったんだもん」

「だからってなあ…」



「でも良かったあ…会えて。二人ともありがとう」

危機感など微塵も感じていないほどの笑顔で二人にそう言う蒼。





「ったく、蒼はいっつもいっつも…!何回俺の寿命縮めるつもりだよっ」

「ええぇっ!?だ、ダメよ真昼くん!!伸ばして伸ばして!」

「誰のせいだっつーのっ」

「あ、でもどうやって伸ばすのかな…ヨガでもやれば伸びるかな?」

知らんわ!!つか自分のことだって気付けよ!!」








桜哉は二人のやりとりを見て、そして真昼の飛んだホウキを思い出して、顔を抑えた。




「…っ。思い切り良すぎだろ…っ。…ホント、真昼って…蒼も相変わらずでさ…」くっくっ…



桜哉の笑う声が聞こえる。
つられて真昼も蒼も笑みを零し、三人で笑い声をあげた。
昔のように…。
…だが桜哉の瞳からいつしか、涙が零れていた。





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