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□お兄ちゃん
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   #13.お兄ちゃん





そんなこんなで場所を変え、改めて話をすることに。
御国が御園の兄だったという事実に、未だに驚いている。




「兄弟…かぁ。全然気付かなかったです…」

「うんうん」コクコク

「あっはっはっ、誰もが納得のモノマネ披露しようか?」


そう言うと足をテーブルの上にダンッと上げて…。




「貴ッ様ァ!!!こんな小汚い場所が飲食店だと!?僕をバカにするのも大概にしろ!!これだから庶民は…」

最後まで言葉を聞くことは出来ず、真昼にたんこぶを作られテーブルにぶっ倒れた。
周りのお客様に謝る真昼と、そんな御国をあわあわと慌てながら、テーブルに敷かれた血をふきふきと拭いている蒼がいた。





「……似てたでしょ?これ誰よりも似てる自信あるのよ」


「似てた」

「に、似てました」


「…ていうか蒼ちゃん、拭くとこ違くない?フツーオレの方じゃない?」

「確かにな」


「えぇっ!?」

「…うん、驚くとこも違うよねww」



とりあえず場は落ち着き、コップを手にし頬杖をつきながらどこか安心しているように御園のことを少しだけ話し始めた。
「御園は昔から体が弱くて…」ほとんど家から出られなかったくらい。
それだけ弱かったと聞くと、今外に出られている御園のことを思い出し、蒼は思わずふと笑みを零した。
そんな蒼の表情を見逃すはずが無く、御国もどこかふと笑みを零し、びらっと沢山の写真を出した。





「そんなわけでオレの御園コレクションを披露しようか?…性的な目で見ないでね❤殺すぞ❤」

誰が見るか!!…って写真!?」


テーブルに置かれた沢山の写真を目にし、真昼たちは信じられないような表情で。
蒼は頬を紅潮させ、「わぁっ❤」と可愛いものを目にした時のようにキラキラさせていた。




「うわっ、これ御園!?すげー笑ってる…今と全然違う…誰?!」

「かわいーぃ!御園くん、まるで天使みたい…ぎゅってしたいなぁ❤」

「あっはっはっ、いやーこの頃は天使だったよねー」


すると真昼も蒼もが妙な違和感に気付く。
「…あれ?」小学校低学年くらいまでの写真しか…感じた違和感に気付いたように、御国は写真をざ、と片付け始めた。





「オレは吸血鬼(サーヴァンプ)については御園より詳しいんだ。椿を倒すのには協力したい」


ぼそ、と呟く…(…オレがキミの言う『壊さない』に賛同するかは別としてね)。
「御国さ…」真昼の言葉を遮り、ビッと指を二本立てる御国。





「まず…オレがキミ達に接触を試みた2つの理由を披露しようか?」

「2つの理由?」




「一つ目。キミの持つ“怠惰”が吸血鬼(サーヴァンプ)の中でもっとも強いこと」



「!…クロが…」

「ただの猫に見えても、サーヴァンプ達の長男(おにいちゃん)だからね。

 あと“怠惰”の必要性としてもっと重要な理由があるんだけど…その説明は後にして」


「お前そんなに…?」「ただの猫です…」そんな会話をしている。
会話を余所に、蒼はある出来事を思い出した。
一番最初の時の戦い、クロの冷たい瞳…あれが、強さの証なのだろうか…。
そして二つ目の理由が明かされる。




「二つ目。敵の目的について情報が欲しい」


「えっ?でも椿は、『戦争がしたい』って…それが目的じゃ…」

「“戦争”っていうのは、先に目的があってするものだよ、普通はね。取り合うものは場所だったり、権力だったり、価値観だったり」


「…確かに。歴史の中でも領土を広げようと戦争を起こしたり、天下を取ろうとしたり、理由は様々だけど…目的がありますね」



「じゃあ、この戦いの末に椿が得るものは何だと思う?」

「あっ!!」


真昼はある出来事を思い出した。
叔父が帰って来た時に、回転寿司で昼を取ろうとした時に遭遇してしまった椿と真昼。
その時は叔父のダジャレに爆笑した椿がいたが…。
蒼も一応その事は聞いていた。




「そういえば…あいつこの前、“釣り”が…どうとか言って、何かを…

 ・・・・
 待ってる…ような…?」


「“待ってる”…なるほど。近いかもな…」


コト、とコップを置く御国は、ちらりと蒼の様子を伺うと、何か考え事をしている様子を捕らえた。
“待ってる”…何を?蒼の中でぐるぐると回る。
椿の戦争をする目的、Fの関わらせたくない理由、空白の記憶、それらを集め、関係しているとしか思えない。
だが何を…?結局答えは見付からず仕舞い、蒼は結果を見ずして『そうするのか』の推測を立てた。




「…あの、御国さん」

「ん?」


「もしその、真昼くんが言っていた…椿さんが“待ってる”のだとすれば…」

「うん」





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