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□お兄ちゃん
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「戦争を起こした上で、椿さんにとって大事な“何か”が帰ってくる。

 その“何か”が帰ってくるのを“待ってる”ということに、繋がらないでしょうか…?」



「!」

「若しくは、その“何か”を取り戻す為に戦争を起こしている、その取り戻す機会を“待ってる”ということにも…」




「ん〜…可能性はあるけど、まだ断定はできないな…」

「そう、ですか…」


「目的がわからないと、先の動きも読みづらくてね。とにかく今は情報を集めたいんだけど…」

「あっ、吸血鬼達の情報交換サイトが今使えない!」

「そうそう」


「え?そうなの?」

「ああ、今日クロが見ようとした時、サイトが落ちてて…リリイに聞いてみたけどわからないって…」


リリイという名前を聞いて、ほんの一瞬影を落とした蒼。
現在リリイに、自分の出しているであろう何か、異質の何かを調査してもらっている。
未だ結果は来ていない…不安は募るばかりだが、真昼にはそんな素振りを見せることは出来なかった。




「あのサイトの管理人にはオレが連絡しといたよ。管理してるのは“ある機関”なんだけど…」


バシャッ

クロの飲んでいた飲み物が倒れ、テーブルに広がり渡る。
「わっ!?クロ!?何してんだよっ」「服にかかってない?平気?」「お…おお…」わたわたとするばかりのクロ。
明らかに動揺している事は、真昼と蒼にも分かった。





「…その機関は人間によって組織された…“人”と“人でないもの”との『共存』を図る中立機関だよ」










   ―――――ドクンッ―――――



「っ…!!」

心臓を打たれるような鼓動の動き…。
ぎゅっと胸辺りの服を掴み、蒼の脳内に映像が映し出された。











   ―――――機械染みた大きな椅子…―――――




   ―――――手足を個々に拘束され…―――――




   ―――――両眼を覆う白いアイマスク…―――――




   ―――――身体に繋がれた大量のコード…―――――






   ―――――…一人の…女の子…毛先がウェーブがかった…黒い髪…―――――









(な、なに…今の…っ)


思わず頭に手を置く蒼。
蒼の様子を見ながら、御国は説明する…何百年も吸血鬼と人とのバランスを取ってきた。
情報も武力を持ってる組織で、いわば人外達の抑止力かな、と。
そんな機関があったんだと真昼が言うと、クロは急にガタと席を立った。




「タバコ吸ってくる」


「…?」

「はあ!?ちょ…お前、タバコなんか吸わないだろっ、クロ!?」

真昼の言葉を聞かず、クロはそのまま外へ出て行ってしまった。
そんなクロを心配そうに見守る蒼。




「…彼は吸血鬼側の長男(トップ)、その機関とはいろんなやりとりがあったはず…

 『嫌な思い出』があっても、不思議じゃないよ」



(……クロ…その“機関”って、一体…)













「蒼?」

「え?」


ずっと頭を支えている蒼に気付いた真昼は、心配で声を掛けた。
「大丈夫か?具合悪いならもう帰るか?」真昼の気遣いに、蒼は直ぐ様笑顔を取り繕い、「ううん、大丈夫」と返した。




「クロが帰ってくるの待とう?ね?」

「あ、ああ…」


「あ、私…お手洗い行ってくるね」

「お、おお…」


蒼も逃げるように席をカタンと立ち、手洗い場へと向かった。
ジャーッと流れる水を、ぼんやりと見つめる蒼。
手を伸ばせば、水が手を濡らしてそのまま下へと流れていく…。





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