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□棺桶の男
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祭り当日…。
真昼は交通整理の為別行動。
カラコロと下駄の音を響かせる蒼と、けだるそうに歩くクロは屋台へと向かっていた。
「…おい、転ぶなよ?」
「だいじょーぶ!大丈夫よー♪」ウキウキ
「はあ――――…」
そう、今の蒼は浴衣姿。
紺色の背景に、大きな白い花と三日月、所々には、光ってみえるようなホタルが散らばっている。
髪型はいつものように、横に水色のリボンでまとめていて、右手首には白いリボン。
巾着を持ってウキウキワクワクと気分を上げていた。
浮かれているせいか、足もとも疎かになるのではと、クロも少しハラハラしている。
「…ほら、手」
「へ?」
「掴んでないと、お前ぜってーコケるだろ…」
「大丈夫だいじょー…っわ!」カッ
「!…ったく、言った側から」
案の定、蒼はコケそうになったが、隣にいたクロが支えてくれた為、地面に手をつけることはなかった。
「ほら…」スッと手を差し出すクロに「あ、あはは〜、ありがとう」と苦笑いをしながら、蒼はクロの手に自分の手を乗せた。
そして再び歩き始める。
「何食いたい…?」
「かき氷!」
「…言うと思った」
「いいよね、かき氷♪
真っ白な雪原の山みたいで、その上を好きな色で彩る…。
しゃくしゃくして口の中に入れた時の、あのキ―――ンて来る感覚…。
はあ…とっっっても幸せ❤」
「溜めるなぁ…はぁ〜、向き合えね―――…つか、まだ食ってねーのに」
紅潮させた頬に手を添え、蒼の周りがピンクの幸せな色のオーラで彩っているようだ。
そんな蒼に、クロはまるでついていけねー…とでも言いたげな表情でため息をついた。
蒼のアイス好きは今に始まったことではないが、放っておけばかき氷しか食べないような気がしてならない。
クロはどうしたものかと悩み始めた。
「私、大きくなったらかき氷屋さんになりたいなあ…❤」
「はあ?」
「屋台を回っていくの!素敵だね、かき氷に包まれた生活❤」
「…お前、幼稚園児でもそんなこと言わねーぞ…?大きくなったらかき氷屋って…」
「えー?言うよー」
「変だぞその幼稚園児…他のも回っていくんだからな…?」
「はーい」
それから二人、綿あめ、たこ焼き、ヨーヨー、などなど回り、蒼の要望でかき氷やあんず飴なども回った。
…だが、暫く回った後、クロがちょっと目を離した隙に蒼の姿が無くなっていた。
【じゃがバター買ってくるね 蒼】というメモ書きを残して…。
クロの服にくっついていたのをカサッと取り、またはあ〜…とため息をついた。
「……危機感なさ過ぎだろ…」
とりあえずここにいても仕方ない。
真昼の所に戻るかと、クロは足を進めた。
一方、蒼はじゃがバターを買い、先に買ったかき氷をしゃくしゃくと崩しながら歩いていた。
…すると、道の真ん中でうろうろしてる人を見かける。
何かを探しているように見えた。
「…あの〜」
蒼は迷わず声を掛ける。
「ん?」
「何か、お困りですか?」
「……」
「?」
蒼と目が合った途端、その人物は固まって動かない。
思わず蒼も首を傾げる。
すると蒼に近付き、上から見下ろすような形でその人物は蒼を見つめた。
(わっ…背、大きい…)
あまりにも背が大きいため、一瞬強張らせ肩が上がる蒼。
思わず蒼もその人物を見上げた。