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□安全な庭
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   #20.安全な庭





そこはC3の拠点。
廊下で、露木は御国と電話のやり取りをしていた。


『ちょーっと面倒なことになっちゃったよ。真昼くんやら蒼ちゃんやら何やらがウチに侵入しちゃってさ。

 親父と接触してるみたいなんだよね。

 修平、どーにかしてくんない?』





「ど――にか…?…漠然とした依頼はやめてください」


御国からの突然の電話、そして漠然とした内容に、露木はちょっと怒り気味で返した。
当の御国はというと、アベルを抱きながら外で電話している様だった。




『あと俺、御国先輩に番号教えた記憶ないんですが(怒)』

「あっはっはっ。オレをなめんなよ〜〜?」


『城田真昼と雪見蒼は今のところ要観察対象で、接触の予定はありませんし。一度接触して失敗してますしね。

 それに…もとより無理ですよ。

 “有栖院家”は治外法権…あなたもよく知ってるでしょう。


 というかご自分で行ったらどうですか、実家でしょう』






「…………」


何か訳がある様子…。
御国の表情に影が落ちる。
だがそんなことは、電話の向こうにいる露木が知る筈もなく。
御国は陽気に返答した。




『自分で行けないから修平を使おうとしてるんじゃーん。

 ねえアベル〜〜〜?修平は物分かりが悪いね〜〜〜?や〜〜ね〜〜〜?』




「……」イラァ…


そんな言い回しに、露木は苛立ちを見せる。
…まあ、誰もがそんな言い方をされたら頭に来るのは当然のことだが…。
露木は「ふう…」と一息つくと、眉間にシワを寄せながら複雑そうな表情を見せて、呟くように言葉を発した。





「まあ…あなたがあの家の門をくぐることは、二度とないんでしょうね…」






















一方、その有栖院家では…。




「ほらっ、これが小学校入学の時の写真でね!かわいいだろう!?ランドセルが大きすぎてねえ」

「はあ…」

「少し小さめのを特注したんだよ。懐かしいなあ〜〜〜」


御園の父親である御門がアルバムを広げ、でれ〜〜〜〜〜〜っとしながら意気揚々と説明をしている。
「こっちは父の日に御園が描いた絵でね」続ける御門に、呆れ果てたような表情で「はあ…」としか返事ができない真昼。
隣に座っているクロは「あきた…」と呟いてだら〜んとしながら眠そうに目を閉じている。
奥では、鉄と蒼が下位吸血鬼(サブクラス)の子供たちと楽しそうにしていた。
一人の子供を高く上げ、隣には蒼が別の子供を抱っこしていて喜んでいる様子。




「パパへの愛情がたっぷりでよく描けてる!」

「はあ…」

「こっちは…はっ!!


急に様子が変わる御門。
ガタ…と席を立ち、いったい何を言うのやら…。
蒼も、ドキドキしながらその様子を見守っていた。




「い、いくら幼少期の御園がかわいいからって」

「は?」





「貴様!!

 私の息子を性的な目で見るな!!」
パァン


メガネが!!見ねーしっ」


勢いよくメガネを割る御門。
「すごいっ!気合でメガネが割れたべさ!?すごいっ!すごいべさ鉄くん!」はふはふと小動物のように興奮する蒼。
隣で鉄が「おう、スゲーな」と相槌を打った。
すごくない!!感心するとこじゃねー!!」流石ツッコミ役、真昼は直ぐ様反応し突っ込んだ。





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