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□安全な庭
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「…御園に何かあってからでは遅い。私の“最後の家族”だ」


「最後の家族ってどういうこと…」




「さあ、お茶会はお開きだ」


「まっ、待ってください!御園くんとお話を…!」





ザッ

「帰るなら送ろう。帰らないと言うなら…二度とここへは来たくないという思いをしてもらうことになる」


蒼が全部言う前に、御門は言葉を遮る。
御門の左右に、洞堂と宇佐美が立った。
三人の立ちはだかる圧に、蒼はビクッと肩を強張らせた。
すると蒼の前にずいっと出てくる鉄。





「て、鉄くん」


ボソッ「大丈夫だ、蒼」
心配する蒼の頭をポンッと撫でて「…おい、おっさん」と前に出る。
蒼は、ただきゅっと手を握って見守ることしかできなかった。





「親が子供を縛りてえみてえに、ガキは結託して大人に反抗したがるもんなんだぜ」



にこ

「…一理あるね。 ―――洞堂


御門の一言が、洞堂を動かす。
鉄の足をドッと抑え胸倉を掴むと、大きい体格の鉄をギャンと一回転させながら奥へと吹っ飛ばした。





ゴッ

「!!」


「鉄くんっっ!!」



「はぁ…だから…言ったんすわ。謁見はとびきり慎重にって…」


「鉄くん!!」蒼が吹っ飛ばされた鉄のもとへ向かう。
「鉄っ…」真昼も名前を呼んだ一瞬、やまねがかんざしをす、と取り外し、いきなり真昼に向けた。
咄嗟に反応したクロが真昼を押し、クッキーを加えながらフォークで器用に受け止める。





ガキン!!

「オイ…ばーちゃん…。向き合えねーなあ…」


「人様のお家ではお行儀良くするものですよ?」



にっこり微笑みながらも攻撃体制のやまねに冷や汗をかくクロ。
仕舞いには壁に首輪が引っ掛かり、動きが封じられた。
思わず真昼も「クロ!弱っ」と言ってしまう。
「クロ!大丈夫!?」と蒼も叫び、クロは「無理だ…向き合えねー…」といつもの口癖を交わした。
口癖を聞いて、ほんの少しほっとした蒼は困ったように御門を見やる。
御門は静かに言葉を続けた。




「吸血鬼の戦争なんて、私の息子の知ったことではない」


(何で…?もし戦争が始まったら、沢山の人が失ってしまうかもしれないのに…)


「御園の意思を聞くまでもない…。御園には戦わせたりしないよ」


(違う…違うよ。御園くんは、そんなこと求めてない…!)


「何の覚悟もなく吸血鬼(ちから)を使えば逆にのまれてしまう。まるごと、何もかも」




(覚悟…この人も、力を知ってるからそう言うの?)


御門の言葉に否定や疑問を持つ蒼。
一方で真昼も、疑問を持った。





(…あれ?この話前にも…)


その時、真昼の脳裏に御国が浮かんだ。
初めて会い、名前も名乗らず助けられた時のことを…。




「御園はまだ子供だ。そんな覚悟はないよ…」

「そんなことない」


またも意見する真昼の言葉に、御門は眉間にシワを寄せる。
「…真昼、くん…」きゅっと口を閉じる蒼。
(ちゃんと分かってる…真昼くんも、私だって知ってる…御園くんは、弱くない…!)心の内で感じる、御園に対しての思い。
自分自身が思っていることを真昼が言葉にしてくれたのが、ただただ嬉しかったのだ。
スッと立ち上がる蒼も、自分の思いを口にした。





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