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□スノウリリイ
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「…御園!待ってください御園…」




「来るな!!」



庭に出てきた御園を追いかけるリリイ。
有栖院家に椿の下位吸血鬼(サブクラス)であるオトギリがメイドとして忍び込んでおり、事件は起きたのだ。
思い切り走った為、御園は息が上がっている。
リリイに背を向けながら、自分の思いをぶつけた。




「…僕はずっと不思議だった。僕は御国が憎い…なのに

 ・・・・・・・・・
 何があってどうして許せないのかどんどん忘れていく。

 そうだ…僕は今まで何度も御国が家を出た日のことを思い出そうとして、御国の部屋に入ろうとした。

 そしていつも…東館に入る直前で誰かに…」



御園の目は横目でリリイを睨みつける。
怒りを込めた御園の頭の中で、家に守られ続いている自分自身を浮かべて…。






「…リリイ。

 貴様がそのたびに僕の記憶や感情を操作していたのか!?

 みんなで僕の思考を都合の良いように補正して!

 僕はばかみたいにこの庭で幸せに暮らしていたんだな!!

 一体何を隠してる!?



「違…うんです、御園。あの…」

リリイの表情は動揺を露わにしている。
それでも、御園は言葉を続けた。






「せっかく友達が伸べてくれた手も、貴様が払い落としたも同然じゃないか!!

 大事な人が伸べてくれた手も、貴様が払いのけたも同然だ!!」



友達である真昼を思い浮かべ、大事な人である蒼を思い浮かべる。
その度に御園は怒りを更に上昇をさせていく。
…そして…。







「もう僕に近付くな!!」



動揺を隠せないリリイは、震える声で反論しようと言葉を発する。
「違…うんです。みその…」だがそこへ、空から狙う一人の人物・オトギリ。
オトギリは糸でリリイに似た服装の操り人形でリリイの背後へ…そして!!








リリイがいつも首から下げている時計諸共、ナイフでスノウリリイを貫いた。











事態が急変していることなど知らず、深夜の道を歩く真昼達。
夜空には星々が輝いていた。




「めんどくせ―――…結局またキサマちゃんの家行くのかよ――…もう深夜だぞ…」

「文句言うなクロ!御園…昼間の電話で様子おかしかったし、何があったかわかんないけど心配だよ」

「何もなければいいんだけど…」

「いや、何かあったから3日前のことがなかったみたいに言ってたんだぞ?」

「あ、そっか…」

「…まだ寝ぼけてんのか?」

「あはは…大丈夫よ?クロ」


「でも正面から行っても入れてもらえないよなー…二度目だし…」

「あ、はいはい。オレ超いい案あるぜ」




   ○ヒュー
   ○クロ
   ○真昼
   ○鉄
   ○棺桶



これしかねえな。かるく5mはいくだろ」

棺桶に鉄が乗り、段々と真昼達が乗っている光景。
そこに蒼はいないが…。




うん!いけるよーな、いけないよーな!俺も同じこと考えたけど…」


「?私がいないよ?」

「蒼も乗るのか?危ねーぞ?」

「ダメよ仲間はずれは!私も御園くんが心配で来てるんだから」

「おー、そーか。わりぃ…ならヒューの下にするか」

「うん!!」

そーゆー問題じゃねえ!…大丈夫、いざとなったら…」


いつもの漫才にツッコミで締め、真昼の手には武器(リード)であるホウキが握りしめられていた。





「シンプルに考えて…飛ぶだろ!!ホウキだし!!」


「ムリムリ…お前らレベルが一緒…」




するといきなり!!








ズン


「!? なっ…!?」



「うっ…なんか嫌な予感。あ―――急に腹が痛く…。早退します…。」


急な地響き、ズズズと不気味な音が鳴り響き、有栖院家に急ぐ一行。
真昼達が目にしたのは…。









オ オ




「何だ…!?」


「っ!?…リ、リリイ…さん…?」



大量の灰塵(ジン)が、一斉に放出されている。
そんな事態に真昼達は目を見開き、一方で蒼は放出しているのがリリイだといち早く察知した。
身体がガタガタと震え出し、ロッカも険しい表情に変わった。
様子を間近で見ている御園も、刺された部分から一気に灰塵(ジン)を大量放出しているリリイに向かって叫んだ。






ズ ズ


「リ…リリイ…!!?」






リリイの顔が段々と変わっていく。
大量に放出されている灰塵(ジン)の光景を、有栖院家の人達は驚いた顔で見やる。




「目的達成…です」















オトギリはそう言い放つ。
御門と一緒に窓の外を見ていた双子吸血鬼のユリーとマリー。




「何だ!?どうなってる…」

「「旦那さま下がって。私達が護衛…」」ふらっ



ぱたっ ぱたっ


「!?」


小さい身体は急に倒れた。
一方で御園も、この事態に冷静を欠かずにいられず…。




「なんだ!?敵…!?リリイを…狙ってきていたのか!?でも、だからって…

 吸血鬼(サーヴァンプ)は…不老不死のはずだ!!刺されたくらいで死ぬはずがないのに…!!」






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