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□“色欲”
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   #24.色欲





クロ!!こっちこっち!!3階の部屋がタオル足りないって!」

ぴゃっ



メイドや真昼達が慌ただしく動き回る。
ニートであるクロですら働かされている様子。






「あと本館行ってお菓子とジュース持ってきて!泣き止まない子がいるんだ」

「お前…こんないたいけな猫をこき使うなんて…うっ…だめだ。もう筋肉痛が…うごけない…」

たまには働けニート吸血鬼!!クロが一番足速いだろ!」

「に゛ゃ――――っ」


「冬用の毛布出してもらってきたぞー。寒がってる子がいるって?」




猫の姿でぷるぷると震える姿をするも、真昼には全く効かず結局走らされている。
旅館の息子である鉄の腕力が毛布をいくつか抱えてやってきたりと、大忙しだ。



「あっちで3人…血はあげてるんですけど…」
「熱がひどいの?」













あれから3日

有栖院家はずっとこんな感じだ





リリイと御園が倒れて

洞堂さんがケガをして



下位吸血鬼(サブクラス)の子供たちもバタバタ倒れた…

体調を崩してしまったり眠り続けたり…容体は様々で…






俺達も

泊まり込んで手伝いをしている








ばたばた



「真昼くん」


「あっ、蒼!



「お菓子とジュース持ってきたよ。あとタオルも。本館でもらってきた」

「ったく…何でオレ様がこがな興味ねえこと…」むすっ


「動いてて大丈夫なのか?」

「うん。こんな事態だし、逆に動いてる方がいいの」

「…そっか。無理すんなよ?」

「ありがと」


にっこり微笑みお礼を言う蒼。
お菓子とジュースを抱えて、ロッカと共に3階へ向かって行った。
そんな小さな背中を、心配しながら見送る真昼。











あの事態が起こった次の日に

蒼は目が覚めた



また3日間も眠ってしまうのかと不安だったけど

早く目を覚ましてくれてホッとした


でも…









蒼っ!大丈夫か!?』


『…うん』

『?…どうした?具合悪いのか?まだ休んでるか?』

『ううん、大丈夫…』








その時の蒼の顔は


無理に笑っているんだと


すぐに分かった





何を抱えてるのか気になったけど

何も聞いてほしくないような


そんな雰囲気が慎まやかに現れていて聞けないまま…














さっきやっと

御園が目を覚ました


それとほぼ同時にリリイも目覚めて

リリイのほうは凶暴なままかもと警戒したものの…












「…おはようございます…?」



普通。





「リリイ…大丈夫か?何か変わったところとかないか…?」

「いえ…特には…」






暴走したときのことは

ぼんやりとしか覚えていないみたいだ


前にクロが暴走したときも

クロは覚えてるのかあやふやだったし…






「でも大丈夫そうならとりあえず良かった…。下位吸血鬼(サブクラス)の子達が大変なんだよ。様子見てやってよ」


「お…オレはもう働けないぞ…。リリイ、オレのかわりにひと肌脱いでくれ…」ふる…っ

働け!!今いつもの調子で脱いでも突っ込む人でもないからなっ。脱ぐなよっ」



クロが身体を震えさせ、真昼がビシッと指を指して断言する。
だがリリイの様子は少し変わっていた。









「…? 私…脱いだりなんてしませんよ…?」


予想外な反応に、真昼もクロも目を見開く。
言葉も出ずに茫然としてしまった。





「人前で肌をさらすなんて…ねえ…」きゅっ




「「誰だお前は!?」」


クロすらも突っ込まざるを得ない状況だった。








「むしろ着ます…」ぼ〜〜〜〜


「クロっ、おかしい!!リリイが…脱がない!!

「人前で脱がないのはフツーだぞ…」

「うっ、そうか…確かに普通なんだけど…でも…。…深い…!!フツーなのにフツーじゃない!!」


いつもなら「ひと肌脱ぎましょう!」と言って服をずらし、肩を丸出しに見せて微笑んでいる筈が…。
全くそんな素振りを見せないリリイ。
落ち着いた夜のひと時、リリイの様子を説明するのに真昼達は集まっていた。









「リリイ…なんだか気が抜けたみたいになっちゃったなあ。

 御園が契約の時にあげた時計が壊されちゃったからだよな。

 リリイ今、得意だった幻術も使えないって言ってたし、

 椿はこうやってサーヴァンプみんな弱らせるつもりなのか…」




(……椿さん…何でこんなこと……)

椿の名前が出たことで、蒼の表情に曇りが映る。
そんな蒼の様子を、小鳥姿のロッカは蒼の肩で心配そうに見つめていた。






「このリリイの力の弱まり方は、尋常じゃあないのう」

「えっ…」



「じゃから、下位吸血鬼(サブクラス)も安定せんのじゃ」

「…もう、ずっと泣きっぱなしの子もいたし、苦しそうにしてる子もいたし…」



「リリイの力を戻す方法を探す必要も出てきたのう。

 我が輩達は皆、不死じゃからと油断しておったが、こんな事態になるとはのう…」



「お前ら全然危機感なかったもんな!」

「むしろ平和な感じだもんね」





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