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□天使か悪魔
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とまあ、こういった成り行きで現在に至るわけである。
飲み物を取りに行く為、真昼と御園がドリンクバーの前で話していた。
「…はあ、ほんとに来るのかなー。てか怪しい人って、それ本当に敵の吸血鬼なのか…」
不安になっている真昼、が御園はというと…?
「…なんだ…?この機械は…一体……「押す」…?どうなるんだ…?」じり…
「ボタン押せばジュース出るよ御園」
初めてのドリンクバー機械に戸惑っているのだった。
それはともかく、真面目な話に戻る二人。
「…リリイと僕が戦うのはしばらくムリだ。武器(リード)が長時間出せないんだ。
簡単な幻術は短時間ならできるようだが…血を飲ませて何度か試したが、
前に見せたような威力のある技は出せないみたいだ」
「攻撃はできないってことか。…灰塵(ジン)が抜けちゃったから…だよな?」
「おそらくな。なくなった力が戻るのか…もっと吸血鬼(サーヴァンプ)について知る必要があるな」
御園の言葉で、真昼の脳裏にC3内でクロに言われた言葉がよみがえる。
クロの背中に影が出来ているように感じた。
話したくないこと、昔の何かについて…それらがまとっているように…。
「…吸血鬼(サーヴァンプ)って、昔何かあったみたいだよ…な…?」
「僕も…そう思う。何か僕らに話したくないことなのか…」
「話したくない……(…蒼も、御園の家でちょっと様子がおかしかったんだよな…)」
もう一つ真昼の脳裏によみがえった、蒼の表情。
取り込まれたリリイの中から御園と一緒に救出できた次の日、目覚めた蒼の表情はどこか悩んでいるようだった。
『ううん、大丈夫…』という言葉、圧が押し込んできたようで何も聞けなかった真昼。
クロ達の生態について知らないのかと本人たちに聞いた後も、クロとヒューを見て涙を浮かべていて何もできなかった。
何か知っているのか、何か関わっているのか…。
C3でも露木から言われた言葉もいまいち理解ができない。
当てはめられるピースの数が少なすぎて、何も回答は得られないまま。
「…蒼、もさ…吸血鬼(サーヴァンプ)と、何か関係があるのかな?」
「ん?蒼が?どうしてそう思うんだ?」
「いや、何となく…さ。椿も、蒼のこと知ってるっぽかったし…」
「けど、リリイ達は初対面だろう?」
「そう、なんだよな……けど、吸血鬼達と関わってから、悩んでるような顔をすることが多くなったというか…」
「そうなのか?今日は楽しそうにしていたが…」
「蒼は歌うの好きだから、目的忘れて楽しんでるだけかもな…はは;;」
「…こちらの戦力が削れてしまった以上、今後蒼にはなるべく関わらせない方が良さそうだな」
「…俺もそう思う。これ以上関わったら、命の危険だって…」
「……」
そんな深刻な話をされているとも知らず…。
カラオケルームでは…。
ノリノリ♪
「だーかーらー♪できるー♪できるー♪キミならできるー♪
打ちあげてみろよ!心の花火を!」バッ
「ヒューヒュー!良いぞ蒼ー!我が輩もノってきたのじゃー!」
「すげーな蒼、松○修三のダンスを完璧に踊ってるぜ…」
「凄いですねえ!」
「…つか、はっちゃけ過ぎじゃね…?向き合えねー…」
「色々な出来事があり過ぎたんじゃき…仕方ないぜよ」
ノリノリでダンスをしながら歌う蒼に、ヒュー、鉄、リリイの三人が一緒にノっている。
対するクロと、向かいに座りお冷を飲んでいるロッカは冷静だった。
少しじっと見つめるクロは「…お前…」と声を掛けた。
「オレらと同じ、サーヴァンプなんだよな…?」
「全部が同じじゃのおし、おまんらとは勝手が違う」
「ふう〜ん…」
「何故ほがな事を聞く?」
「……別に…」
「…昔の話ばせん奴に、オレ様の話ばする気などせん」
「っ…カンケーねーだろ…」
「そう、関係ない。オレ様もおまんらの過去なんざ興味ねえ。
後ろ向きで中途半端なおまんに話すことはのおし、時間の無駄ぜよ」
「……っ」
きっぱりと言うロッカの厳しい言葉。
眉間にシワを寄せるクロはスッと立ち上がり、ドアへ向かった。
廊下では真昼達がまだ話している。
「御国さんに連絡がつけばいいんだけどな。吸血鬼には詳しいって自分で言ってたし。
でも電話に出てくれないんだよな…」
「…!」
御国の名前が出てきて、御園の表情が変わった。
有栖院家での事件以来、御園も御国に対しての感情が少し変わったようで…。
「御園も御国さんと話がしたいよな…」
「別に。僕のことは後でいいんだ。とにかくこの吸血鬼の問題が優先だ」
顔を逸らし強がる御園だが、内心どう思っているのか真昼は感じていた。
(御園…お兄さん(みくにさん)に早く会いたいだろうな…)過去を知った為、真昼も気を遣っている。
頼まれたドリンクを持ち御園の後ろ姿を心配そうに見ていると、クロがドアから顔を出していた。
「コーラ…遅い…」
「文句言うなら自分で取りに行け!!」