Word

□涙
3ページ/8ページ







「お前らそこまでだ!それ以上騒ぐと…泊まるホテル2人で一部屋にするぞ!!


なんという説得の仕方…。
だがその言葉に二人は対抗できない。
ぐう…と抑え、絶対嫌だ…と呟く。







「扱いに慣れてるなあ…;;」


ハッと気付き、真昼はクロの元へ駆けつける。
張り付けられたままの武器(リード)を手首に戻した。





「クロ!大丈夫かよクロ!お前、どうしたんだよっ。そんなに暴れるなんて…」


声を掛けても、クロは何も反応しない。
「…クロ…?」もう一度名前を呼んでみると、どこからかガタと音がした。
目を向けると、そこには一人の少年がやってしまったと口を抑えている。
頭の上にはロッカが小鳥姿でちょこんと座っていた。





「…えっ?」

「ひえっ、ひっ、ごめんなさ…」


「あれえ」

気付いたロウレスが剣を構えた。
後ろに刺さった剣とロウレスの圧力に尻餅をつく少年。





トッ

「食べ残しがあったっスかね?椿の下位(サブクラス)の残りっしょ?」


「あ…あ、ひぇっ…助けて、椿さ…」




するとそこへ…!










バッ!!



「え、蒼…!?」

「…」


ぎゅっと強く庇う蒼がそこにいた。
いきなり飛び込んできたことに驚く真昼。
対してロウレスは冷静なまま、背を向けて庇っている蒼を目を細めながら見つめていた。





「…き、きみ、は……」

「守る…大丈、夫……言った、もの……守る…って…」ふるふる

「……」


怖い怖いと泣き叫ぶような震えが、蒼の身体を通して伝わる。
蒼がホールに来て話し掛けた少年が見つかり、耳鳴りが酷く打ちつけながらも戻ってきたのだ。
これ以上失いたくない、その思いだけを頼りに…。
そんな蒼の思いを無視するように、ロウレスはスッと剣先を向ける。






「蒼ちゃん、そこどくっス」

「…っ」ふるふる


首を小さく横に振る蒼。
トン、と軽く剣先で肩を叩いても、首を横に振る動作は大きくなるだけ。
ムッ…と唇を尖らすロウレス。






「ソイツは敵の下位(サブクラス)っスよ?そんなの庇って何になるんスか?」


「…っ…守るって……決めた、から…」

「ハッ。あんたも結局ヒーロー気取りっスか?……そこをどくっス

「…嫌、です…っ」ふるふる

「どくっス!」

「嫌です…っ!」ふるふる

「どけって言ってるんスよ!!」

「嫌って言ったら嫌です…!!」ふるふるっ

「このまま庇うってんなら、そこの下位(サブクラス)と一緒にぶった斬るっスよ!?」







キッ

「そんなことさせません!!斬るならどうぞお好きに!!私を好きなだけ斬ってください!!

「なっ…!!」



漸く振り向いた蒼の目つきは、ロウレスを思い切り睨みつける。
恐怖と不安の涙を浮かべながら、それでも少年を守りたいという思いに身を任せながら…。
予想もしなかった言葉に、ロウレスは目を見開き小さくがくがくと手が震え出した。








「貴方が私を斬りつけてる間に、この子を逃がします!!」



「っ…き、きみ…な、にを…?」



「ロウレスさんの気が済むまで、私を斬ればいい!それでロウレスさんの気が晴れるなら!」

「…蒼っ!何を言って…」

「でも!そんなことでロウレスさんの抱えているものは晴れることなんてない!分かっている筈でしょう!?

「っ…ンの!あんたに…あんたにオレの何が…!

「分かりません…!でも、ロウレスさんが傷付いてる……それだけは、分かります…っ」


「……もーいいっス。まとめてやっちゃうっスから


スラァ…




「っ!!」ぎゅっ


悲痛な蒼の表情に目もくれないロウレス。
全て無くそうと剣を構えようとするところを、蒼は目をぎゅっと閉じ少年を更に抱きしめる。
少年もまた蒼にしがみつく。




「やめろっ、ロウレス!!」

剣を持っている手首を握りしめ、止める真昼。




なんでっスか?

 これをこのまま生かす理由も、オレがあんたの言うこと聞く理由もないっスけど?

 蒼ちゃんだって、これを庇うならおんなじ。生かす理由なんてねーっス」


敵意がないのわかるじゃねーか!殺す必要ない!!…それにっ」

「それに?」








































「蒼に手を出すなんて、絶対に許さない!!」







「真昼くん…」


真昼の言葉に悲痛な表情で見つめる蒼。
ロウレスと真昼は互いに睨みあう。
特に真昼は…鼓動が大きく動く中、緊張が走ったまま…。
そして…。









                   ・・
「…まっ、どーでもいーっスけど!こんなモブなんて!」カラン



何とも思ってない、剣を離したのと同じように簡単に言い捨てられた少年。
友人たちのやられた姿を思い出す。
流した涙に、やり切れない思いを浮かべながら…。
そして何事も無かったように笑顔で去って行こうとするロウレス。






すちゃ「んっじゃねー天使ちゃーん。オレ用あるんで先にホテル戻るっス!」

「知るかそのまま消えろ(怒)」

ゴス「あいて―――――」


投げられた瓦礫と共に、ロウレスは去って行った。










「はっ。…気分悪っ


先程とは打って変わって、不機嫌な表情を浮かべながら携帯を取り出した。
「あ、もしもーし。オレオレっス!今日予定通りの時間に行けるっスよー」誰かと会話をしながらその場を後にするロウレス。
一方でリヒト達は…。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ