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□戸惑いの先にあるもの
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「オジサンが有利であることに変わりはないよ」くいっ




「なっ…!」


近くにいたリヒトの身体を持ち上げ、まるで自分の盾のように抱えているヒガン。
卑怯な手に、蒼は怒りを込み上げる。
キッと睨みつける蒼に「そんなに睨むと、可愛い顔が台無しだよ〜?」と茶化すように声を掛けた。
だが蒼にはその言葉は耳に入らず、スタンドを持つ手に力が入る。







(許さない…!リヒトさんを盾に使うなんて…!)


「それにね、お姫様」

「っ!」

「このリヒト君だけじゃないよ?傷付けることができるのは…」ボウッ


向けられた炎の手、その手のひらが差しているのは、近くにいた真昼だった。














「えっ…あ…」びくっ




「気付いたかな?君が攻撃し交わしたとしても、標的が君だけとは限らないんだ」






今にも攻撃しそうな気配。
だが次の瞬間、蒼の周りからとんでもない気配が竜巻のように巻き始めた。
見えないオーラが蒼を包み込む。



(っ…!こ、これは…!)

「…蒼…?」


項垂れるように下を向く蒼。
だがその周りからは、端から見ても分かる感情が渦巻いていた。
まぎれもない怒り、ヒガンも真昼も動揺を隠せない。























「どうするというの…?」



重くのしかかるような低い声で、蒼は話し始めた。







「ねえ?この人(真昼くん)に、何をしようというの?」


(なんだ…?さっきとは、気配がまるで違う…。別人にでもなったような…!)












「何かしてごらんなさい…その時は……貴方を苦しませながら壊してあげる…!


ゴゥッ




オーラを解き放ち、木々が大きく揺れ動き、砂嵐が吹雪いている。
嵐のようなオーラに真昼もヒガンも目を閉じ守っていた。
ヒガンは片目を少し開き、何とか蒼を見ようとしている。
そして目を合わせた瞬間、紅く光ったように見え、一瞬の恐怖を味わい冷や汗を垂らした。
ヒガンの中で、本能がぽつりと呟く。
























          ・・
     ―――――これには 抗えない―――――







ゆらりと動く蒼は持っていたスタンドを再び上に上げる。
分裂した多くの水玉が揺れ始め、一斉にヒガンめがけてやってきそうな勢いだった。
だが振り下ろそうとした瞬間…!

















   ド ク ン … ッ






「…っ!」


バシャアッ

水玉が一気に弾け飛んだ。
と同時に、持っていた武器(リード)が形を崩し、光になり蒼の手首に戻ってしまった。
オーラを打ち消すかのように、蒼の意識がハッと呼び起こされた。
手から武器(リード)が消え、力が抜けたように手を下ろした。
蒼は何が起こったのか理解できないまま茫然と立ち尽くしている。
そして、自分の手を見つめた。
先程の状況が消えたといち早く理解したヒガンはリヒトを脇に抱え、立ち去る前に告げた。








「さっきので分かったよ、お姫様。…君は“こちら側”の存在だ




「まっ…待て!その人を離せっ…」


立ち去る寸前、真昼はリヒトが連れ去られるのを止めようと動いた。
だがそんな行動は意味も無く…。





「うん…勇敢なのは結構だけどね」


す…と手を伸ばし、走ってきた真昼の頭にポンと手を置いた。
もしこれが炎だったとしたら、一瞬で頭を燃やされていたかもしれない。
そんな恐怖が一瞬にして過りびくっと強張らせた。
だが相手はあえて何も出さず「リヒト君の知り合いによろしく言っておくれ」と残す。
恐怖にまみれた真昼が言い出した言葉、ヒガンはそれに答えた。





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