Word

□ひとり
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バン

『おい!いつからオレ達は暗殺集団になったんだ!?』


『そうっス。こんなことしてほんっとになんか変わると思ってんスか!

 あの人の命は…オレ達がこんな多数決なんかで消せるもんじゃないっスよ。

 そんなの、オレ達が一番知ってるじゃないっスか……』







…ロウレスよ。
                ・・
 お主はちと冷静じゃないのう。…彼女のことと重ねておるのか?私情を挟むでないぞ』


『はッ……』カチン




(彼女?…もしかして、前に見た夢で処刑台に立っていた、あの女の人のこと…?一体、何が…)










『我が輩と嫉妬と色欲は賛成、憤怒と強欲と暴食は反対…。のう、お主はどう思う。


 スリーピーアッシュ




バッ

(っ!?)


暗闇で見えず、ずっと奥の席で座っていたクロの姿を捉えた。
机にだらんと身体を預け、だるそうな顔で、こちらに目を向け、口をゆっくり開いた。




『―――――…』


(え…?なん…て……?)




何かを口にした言葉は、蒼の耳に届くことは無く、そのまま闇へと葬り去られた。














































――――――――――……





「……っん……あ……」


ぼんやりした視界を、目をこすり正常にしていく。
ふと見た布団はもぬけの殻、そこに眠っていた存在を思い出し、蒼の顔に影が差した。






(そっか…ロッカが消えちゃって……悲しくて泣いて、そのまま寝ちゃったんだ…)


布団の上にそっと手を乗せる。
時間が経っていたせいで、温もりは完全に無くなり、まるで冷たくなった死骸に触っているようだった。








「……顔、洗ってこよう…」



魂が抜けた様子でぽつりと呟くと、蒼はタオルを持って部屋を出ていった。
洗面所へ向かい、パシャリと水を着けて鏡を見た。
自分の顔に、思わず笑みが零れる。





「あは…なにこれ……目がすごい…」


泣き腫らした目がふくっと赤くしていた。
そんなにも泣いていたのかと、改めて理解した。
顔を拭き終わり、タオルから覗き見たように右手首の模様に目が入った。
そこであることに気付いたのだ。







「あ、桜哉くんから貰ったリボン…そっか、公園で…探しに行かないと。あ、でも…また勝手に外に行ったら…」


皆に迷惑が掛かると考えた蒼。
多分皆はもう戻ってきているだろうと思い、大広間に向かおうと足を運んだ。
だが、足取りはとても重く、まるで重しを引きずっているような感覚だった。
真昼との言い合いから誰とも顔を合わせず、公園に来た時も逃げ出すように走り去っていき、直ぐ様部屋へ向かった。
とてもじゃないが、顔を合わせるのが気まずく何を話したらいいのか戸惑うばかり。
近付くにつれ、手足が震え始めた。
すると。







「俺…御国さんの店に行ってみるよ!もしかしたら、御国さんならクロを戻す方法を知ってるかも!」



立ち上がる音と共に聞こえた真昼の声に、心臓が跳ね上がるくらいの鼓動がドキンッと動く。
あたふたする蒼は角の方に身を潜めた。
どうやら出かけるらしく、蒼は会話にしばらく耳を傾けた。





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