Word

□おれはまちがってない
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   #32.おれはまちがってない







To be, or not to be


The Answer is ...































YES

『…殺そう』






クロが一言、そう述べた。
その答えに、真昼も蒼も目を見開いた。








 ・・・
『オレが殺す』




今まで見たことのないクロの表情。
影が包む表情を目の当たりにし、ナイフを胸に刺されたような言葉を耳にし、蒼は目の前が真っ白になったような気持ちになった。
それでも、物語は進んでいく。




ガタン!

突然倒された椅子、ゆらりと立っているロウレスが倒した。
その足をコツコツとゆっくり進め、クロのもとへ歩み寄る。







『…オレが?殺す?はは…自分を作った人間を?

 兄さんてば寝すぎでどーかしちゃったんじゃないスか?それとも目ェ覚めてないんスかね?』






俯いたままのクロにロウレスは続ける。


『あの人がいなきゃオレ達今ここにいないんスよ?そうだろ?あの人は、いわば…っ。






































 “親”だろうが!!“家族”だろうが!!!



 オレ達が…っ、味方でいなくてどーするんスか、あんたが味方でいなくてどーするんスか!家族の、オレ達が…』





言いたい言葉を吐き続けていると、遂にクロから反論が返ってきた。





















『そんな言葉を使うんじゃねえよ』



恐怖にまみれたような表情に、ロウレスは体を強張らせた。
改めて感じる、長男のオーラ…。







      ・
『オレたちは何だ?どうやって生まれた?

 □□□□□□□□、□□□して、□□□だろうが。

 オレは、吸血鬼(オレたち)が生まれて良かったと、思ったことはねえ。一度も』



『でも…だって、あの人は、兄さん(あんた)の……っ





ロウレスの掛けようとした言葉を無視し、兄弟達の前から去っていく。
その背中を追いかけようと、真昼は走った。










「!ク…クロ!クロ…っ」


(っ…わ、私も追い掛けなきゃ…っ。クロを…あんなクロを、そのままになんて……!)




クロの服を掴んだその瞬間、真昼は引きずり込まれていった。
誘いこまれるように、蒼もその中へ入り込んでいく。
すると背景は、先程とは全く違うものへと変わっていた。
西洋風だった物々しい風景から、純和風の世界へ。
そこがどこだか直ぐに想像はついた。







(!?えっ…ここ…まさか、日本!?

 これは、クロの記憶だ。クロの過去。サーヴァンプの生みの親に、一人で会いに…)



















     吸血鬼(サーヴァンプ)をたった一人で作った人――…





















『久しぶりだなァ』






(!!)

(……この、声は……)




           ・・・・・・・・・
『元気そうでなにより、スリーピーアッシュ。


 ……いや、●●●●』











(え…?今、何…て…)


ブ ワ






突然、茨のような黒い蔦の影が蒼を覆った。
「な、なに…!?」周りは真っ暗になり、まるで卵のようなまあるい世界に一人ぼっちになる。
すると地面から、白い文字が天に向かって登っていくのを目で追った。










     まさか!! 誰だ!! あいつだ


     本当に生きていたなんて あいつだ 嘘だって言ってくれ


     逃げたい 交わす言葉はあるのか? 嫌だ


     訊け お前は何をしようとしてる


     オレが?


     殺せるのか? 嫌だ!


     嫌だ! なんて懐かしい やめろ!! 何も考えるな!!


     思い出すな














「こ、これ…全部、クロの思い…?」





ザッ…


目の前に、テレビ画面のように現れた映像。
暗い和室の畳の上、誰かがほわりと座っている。
姿も見えない、何かを話している。
そしてまた、あの白い文字が天に向かって登っていった。









     今ならまだ引き返せる


     終わりにしないと


     殺せない!!


     どうしてこんなことに


     人じゃない!!


     これが正しい


     どうしてこんなことに








「そっか…話をしたんだ。この話で、クロは…」






































     でも   殺さないと。























     ・・・・・
     迷ったんだね


       ・・・・
     迷いながらも 殺したんだ







黒く大きな手の爪で襲い掛かる恐ろしい形相のクロ。
だがその瞳には、淡く光る雫が浮かんでいるのが見えた。
その雫が、蒼の瞳にも浮かんできた。




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