小説
□普通
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ーアニメの世界と違って
この世界は普通だ。ー
良くも悪くも聴こえる感想だが、私が述べてるのは断然的に後者のほうであり、この退屈な生活の現況でもあった。
中学時代は授業をサボリ屋上で昼寝…みたいなアニメのようなことを夢見たりしていたが、高校にあがり、硬い南京錠で立ち入りを拒む屋上の扉を見て、今ではすっかり現実を憎むようになってしまっていた。
アニメの見すぎ……なんて言われることが殆どだが、校則的にも顔面格差的にも、アニメと言う名の2次元に憧れる外無いだろう…。
「はぁ…」
残暑がなくなり、やっと過ごしやすくなってきた今日この頃。私の小さな溜息は自然の中に溶け込んで何事もなかったかのように消えていく。
都内には数少ない森林公園、学校からも近く、自然が好きな私にとっての唯一のサボリスポットだ。本当は学校内でサボるのが夢だったのだが、この森林公園で無念の妥協をした私は、定期的にここに来ていた。
が、来てみると中々いいもので、チョロチョロと流れる小川を眺めているだけでも心が癒されていく。
予め買っておいたお菓子の袋をベリっと開けるとしばらく私は小川に反映した自然を眺めていた。
しばらくして、ふと目に入った看板を見てみると、そこには[森林公園取り壊し、伐採のお知らせ]と即興で書いたような字で私のサボり場所が無くなるという内容が記されていた。小さい文字を遠目から見ることはできないがハッキリと見えたその文字にまた溜息を吐く。
地域住民の人が必死になってビラを配っていたのを知っていた。大方著名などをして森林公園を守ろうとしていたのであろう。
ーほらみろ、これが現実だー
努力が実るとは限らない。
頑張ってハッピーエンドになるのはアニメの世界だけ。
私が生きている世界は
こんなにも_________
こんなにも普通なんだ。
袋からお菓子を取り出し豪快に口の中に入れた。
向き直った小川には頬にお菓子のカスをつけた私が映っていて、苦笑しながらも、また自然を堪能しようとしていた。
「ねぇねぇ」
しばらく見つめていた小川に紫色の何かが映る。
「!?」
茶色の土、葉っぱの緑、空の蒼、もみじになりかけているであろう黄色。そんな自然の色達のなかで、一際異彩を放つ紫。明らかに場違いなカラーに思わず振り向く。
「そのおかしさ、ちょーだい」
そこには大きな人が立っていた。文字通り、大きい人だ。
とてつもなく巨体に見えるのは自分が座っているからではないだろう。まだ少し残る幼い顔立ちや、学生服を身にまとっているところを見れば、自分と歳の近い人物だと認識できる。
普通ならば。
しかし自分には直ぐにわかった。分かってしまったのだ。
その人物が私と同い年であることを。2mを超える巨体や、薄紫の髪色、やる気の無さそうに半開きな瞳。陽泉高校の制服。
そこにいたのは、紛れもなく、私の好きな漫画、もといアニメ
「黒子のバスケ」のキャラクター。紫原敦だと言う事を。