『おかえり。』

□U 本気〈side:law〉
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ドアが閉じる音がした。人の気配と共に食事の匂いが近付いてくる。意識はあるのに、すぐには目が開かない。

おれ自身平気だと思っていた傷は、予想以上に深く、この船の船医は、おれが勝手に動き出さない意味も込めて、眠りに導かれやすい薬を飲ませているようだ。

本来なら医者であるおれが、他の医者の言いなりになるはずもないのだが、何故だかトニー屋の言うことに素直に従ってしまっている。そしてそんな自分を少なからず楽しんでいるというのも事実である。

もう、そんな時間か…。

おれが医務室の住人と化してから、毎日律儀に同じ時間に食事を運んでくる金髪のコック。口の悪さは甚だしく、本気で腹が立つ時も多いが、この船のクルー全員の奴への信頼度は半端ない。まだこの船の客人になって日の浅いおれにもそれが見てとれる。
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