『おかえり。』
□W 忠告〈side:law〉
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何を言ってるんだ、この女は?
あいつがこの女をおれと二人きりにするはずがない。
そんなにおれから逃れたいのか?
おれは一瞬食べる手を止めてナミ屋を見た。
「あいつがおれの所にわざわざお前を一人でやるわけがないだろ。」
「何でよ?」
「さっきからお前に言ってることを、黒足屋にも言ってるからだ。」
「…え?」
「お前をおれのモノにしたいってな。」
「なっ…!?」
ナミ屋の表情が固まっている。
…ということは、黒足屋がこの女を一人でおれの所に寄こしたっていうのは本当なのか? あいつ、いったいどういうつもりだ?
あいつの余裕がそうしたのか…?
いや、あいつにそんな余裕は見えなかった。毎日マジギレだったからな。
おれの頭の中は、黒足屋の真意に興味を奪われた。
そこである結論に達する。それはそのままおれの口からついて出た。
「お前ら、まだデキてないのか。」
「…!!」
彼女の顔が一瞬にして紅くなる。
ナミ屋の反応でおれは確信した。笑いが自然とこみ上げてくる。
「だから、あいつは毎回あんなにキレるのか。」
急に笑い出したおれの様子を、ナミ屋は不思議そうに見ている。だが、おれの喋りは止まらない。
「そりゃそうか。あいつにはまだ自分のモノになってない、好きで好きでたまらない女ってだけなんだからな。」
あんなに女慣れしてそうな男が、本気になったこの女には攻められない。 ずっと同じ船にいて、普通の男だったら今の状況はありえない。
あいつのナミ屋への純粋さがおかしくて、そして彼女もそれを当たり前だと思っていることがおかしくて。
きっとこいつらのクルーもそんな二人だから、誰も手を出さずに見守ってるんだ。
…一気に冷めちまった。こんなガキみたいな本気の恋愛に割って入る奴がどこにいる?