炎のゴブレット
□14.第二の課題
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「ラッキーだったよな」
「やったな!Mr.道徳!」
「もういいってば――アゲハのおかげだよ。ありがとう」
「そんな…私はなんにも。ネビルによく言っておいてね」
それよりもアゲハはクラウチの件が心配だった。
映画ではこの時にクラウチがいたが、クリスマスに引き続き今日も来ていないらしい。
(一応見張ってた方が良さそう)
ボートから降りようとしているムーディを見ながら思った。
「あ、スネイプ先生!」
アゲハは目の前を通り過ぎていった育ちすぎたコウモリの姿を発見し、みんなを置いて一人駆け寄る。
「スネイプ先生、えっと、今夜は―――それって…」
特に用件のなかったアゲハは何を話そうかと考えていると、ふとスネイプの身に着けている黒色のマフラーに目を留めた。
「何だ」
「いえ……ありがとうございます」
自然と笑みがこぼれた。
笑顔というよりニタニタしているアゲハにスネイプは眉を寄せる。
「気にしないで下さい。城までお供しますね」
スキップしながら付いて来るアゲハにスネイプの眉間の皺はさらに深く刻まれる。
「付いてくるな」
「戻る場所が同じなんですもの」
「じゃあ何処かにいけ」
「別にいいじゃないですか」
二人の様子を後ろから見ていた皆は言葉が出ないほどショックを受けているようだった。
毎度のことだとアンジェリーナは呆れ果てていたが、フレッドとジョージに至っては金魚のように口をパクパクとさせていた。
「なんだあれ…」
「自主的にあいつの元へ行くやつがいるなんて…!」
「おっどろき!」
ロンは大げさに目をこすりながら言った。
「気に入らん。実に気に食わん」
背後から来たムーディが憎しみのこもった目でスネイプを見据えながら言った。
「…だが、やつも時間の問題だ」
ムーディの存在に驚きつつもハリーはこの間忍びの地図で見たクラウチのこと、そしてムーディの言葉を思い返した。
“いや、わしが一番憎いのは――野放しになっている死喰い人よ”
ムーディが言ったことが、ハリーの考えるような意味だとしたら…。
ハリーはスネイプの隣で飛び跳ねているアゲハに教えてあげるべきだろうかと悩んだ。