炎のゴブレット
□02. 夢は突然に
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ドサッ!!!
大きな鈍い音が暗闇の静寂を破った。
「……いたた」
身体のあちこちが痛い。
最高段から最低段まで落ちたのだから無理もないだろう。
また、落ちるときに首元の付け根からいったらしくそこだけ他とは比べものにならないほどずきずきと痛んだ。
肌寒い。
痛みは感じるもののふと自分は死んだのではないかという思いがよぎった。
恐る恐る硬く閉ざしていた目を開けるとそこには夜の闇に飲み込まれんとばかりに周囲を照らしている満月があった。
「………え?…ここどこ!?」
まさか本当に死んだのではないかと、まだ痛む身体を起こしてみる。
何かある。
暗闇で見えないが、何か巨大な建物が数メートル先にある。
何だろうと目を凝らしていると突然、光が現れた。
しかも、こちらへ来る。
逃げねばとは思いつつも肝心な時に身体は動かない。
そうこうしてるうちに光は着々と近づいて来ている。
(今度こそ死ぬんだ…。あー、お迎えの光が…!)
アゲハは瞳を閉じた。
ついにその時が…!
と思ったが、光は目の前で止まった。
光に包まれ旅立ちか、と思いきやどうも違うようだ。
「目を開けなさい」
厳格な声がいった。
さっきと同じくまた恐る恐る目を開ける。
「どうやって…!ここで何をしているのですか。お見受けしたところ、ここの生徒ではないようですが」
明るさに目がだんだん慣れてきたところで視界に入ったのは、鼻につきそうなくらいまで杖をアゲハに近づけている“例の光”の張本人ミネルバ・マクゴナガルだった。
(ミ、ミネルバーーー!!!)
マクゴナガルは応答を待ってるようだが、言葉が出てこない。
疑われているというのに完全に脳がシャットダウンしてしまっている。
「……どう進入したかは分かりませんが、いいでしょう。ついて来なさい」
アゲハは、コクリと頷きマクゴナガルにほぼ引きずられる形で校庭を後にした。