炎のゴブレット


□08.炎のゴブレット
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ダームストラングとボーバトンが到着し、アゲハは各寮の垂れ幕が壁にかけられている大広間に入ってグリフィンドールのテーブルまで歩いて行き、腰掛けた。

「こんばんは。紳士淑女、そしてゴーストの皆さん。そしてまた──今夜は特に──客人のみなさん」

ダンブルドアが外国からきた学生全員に微笑んだ。
目の前の皿がいつものように満たされる。
ただ今日は外国料理がいくつか並んでいる。

ブイヤベースを口に運びながら教職員テーブルに目をやると、飲み物を取ろうとするカルカロフに対して並んで座っているスネイプはいつも以上に眉間の皺を深く刻んでいた。

(なんでこんなにかっこいいの…。ありがとう、あの時踏み外した私!ありがとう、世界!)

もはや存在すること自体が罪だと思う私は重症なのだろうか。

皺の数でも数えてやろうかと思って見つめていると視線に気づいたスネイプと目が合う。
すかさず視線を逸らすも、顔が火照る。

そうこうしているうちに金の皿がピカピカになると、ダンブルドアが立ち上がり、大広間に緊張感が走った。
隣のフレッドとジョージは一言も聞き逃すまいと身を乗り出してダンブルドアを見つめている。

「時は来た。三大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしておる。“箱”を持ってこさせる前に、二言、三言説明しておこうかの───」

ダンブルドアはバーテミウス・クラウチとルード・バグマンの紹介をした。
紹介に合わせて拍手が起こるが、バグマンの方が断然大きな拍手があった。

「それではフィルチさん、箱をこれへ」

フィルチが宝石をちりばめた大きな木箱を捧げ、生徒たちから興奮のざわめきが起こる。

「課題は三つあり、今学年を通して間をおいて行われ、代表選手はあらゆる角度から試される───試合で競うのは参加三校から各一人ずつ。選手は課題の一つひとつをどのように巧みにこなすかで採点され、三つの課題の総合点が最も高い者が、優勝杯をかくとくする。代表選手を選ぶのは、公正なる選者……“炎のゴブレット”じゃ」

ダンブルドアが杖で木箱のふたを三度軽くたたくと、ふたは軋みながらゆっくりと開いた。
木箱から出てあらわになったゴブレットは、青白い光を放っている。

「代表選手に名乗りを上げたい者は、羊皮紙に名前と所属学校をはっきりと書き、これから24時間の内にゴブレットの中に入れるがよい。明日、ハロウィーンの夜に、ゴブレットは各校を代表するに最もふさわしいと判断された三人の名前を返してよこすであろう。我と思わん者は自由に近づくがよい」

フレッドとジョージは目をキラキラさせて目配せをした。

「年齢に満たない生徒が誘惑に駆られることのないよう」

ダンブルドアが続けた。

「“炎のゴブレット”が玄関ホールに置かれたなら、その周囲にわしが“年齢線”を引くことにする。17歳に満たない者は、何人もその線を越えることはできぬ───最後に、この試合で競おうとする者にはっきりと言うておこう。軽々しく名乗りを挙げぬことじゃ。途中で気が変わるということは許されぬ。心底、競技する用意があるかどうか確信を持った上で、ゴブレットに名前を入れるのじゃぞ……さて、もう寝る時間じゃ」



「“年齢線”か!」

みなと大広間を横切り、玄関ホールのドアへと進みながら、フレッドが言った。

「うーん。それなら“老け薬”でごまかせるな?いったん名前をゴブレットに入れてしまえば、もうこっちのもんさ」
「17歳かどうかなんて、ゴブレットには分かりゃしないさ!だろ?」
「それは分からないけど、やってみる価値はあると思うな」
「「そうこなくっちゃ!」」

そうなれば早速取りかからねばとアゲハは双子に腕を組まれ連行された。
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